静謐の秘境リゾート
坐忘林
Text Rie Nakajima
清澄な空気に包まれた、深い林の中にたたずむ秘境の隠れ家。
刻々と移り変わる大自然のほかには何もない、どこまでも広がる大地と一体になれるくつろぎの空間で、研ぎ澄まされた感性を取り戻す。
日常の些事を一つひとつ捨て去りながら、広大な北海道の大地を車で走ると、山々に囲まれた自然の只中にたどり着く。周囲には清流や深い林が広がり、見上げると、蝦え夷ぞ富士と呼ばれる羊よう蹄てい山ざんが美しいシルエットを描いていた。風にそよぐ木々の音、森に雨露が溶ける香り、透き通った冷たい空気――雄大な自然が与えてくれる数々の恵みを享受し、その静寂に包まれると、初めて訪れたのにもかかわらず、どこか懐かしいような穏やかな気分になる。どこでもない、心身を緩やかに解放してくれる癒やしの場所。日本にいながらにして、物語の中の異境を訪れたような、不思議な感覚を覚えた。
 木々の間に坐すわり、日々の喧けん騒そうを忘却し、自然と一体となる。「坐忘林」は、その名が表す通り、人里から離れた秘境にたたずむ宿だ。雄大な自然が残された希少なエリアに立ち、 ゲストルームは全て独立したヴィラタイプ。シンプルで洗練されたデザインの部屋は、室内外の境界が曖あい昧まいに感じられる、周囲の自然と一体化した空間で、モダンでありながら和のエレメントを取り入れたつくりが、何ともリラックスさせてくれる。林の中の贅沢な別荘と錯覚してしまうほどの、プライベートな感覚。露天風呂からも羊蹄山の息をのむような絶景が眺められた。
(上)西南北海道で一番の高さを誇る羊蹄山。美しい円錐形の山で、もともとアイヌ語ではマチネシリ(女山)と呼ばれていた。
(下)ロビーラウンジ。秘境の地とは思えない、洗練されたクールな空間が心地良い。
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