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300年不変、「一子相伝」の味
味覚のお宿 山田屋
冬に鳥取に来たからには、松葉がにを食べずに帰れない。この季節は競りに沸く賀露(かろ)港沿岸の老舗「味覚のお宿 山田屋」で蟹三昧としゃれこもう。
 山田屋の創業は江戸時代中ごろの1723(享保8)年。「2023年には300周年を迎えます」と9代目・山田長兵衛こと将司氏は事もなげに言う。
 弱冠20歳前後で家業を継いで7年、代々受け継がれてきた一子相伝の味を供する料理長をも務める。
 「気がついたら、レールの上を歩いていたというか、小さい頃から先代の親の仕事を見てきたので、ごく自然に包丁を握るようになりました。継ぐ前に京都・木屋町(きやまち)にある寿司割烹、蘭で修業し、おもてなしのあり方や物の扱い方などを含めて料理のいろはを学ばせていただきました。同店の『食材は惜しみなくいいものを使い、一番いい状態でお出しする』ことを尊ぶ姿勢は、そのまま山田屋のモットーでもあります」


9代目・山田将司氏は日々、漁師町ならではの料理と繊細な京料理を織り交ぜた「因幡料理」を探求している。地元だけではなく全国の旬のおいしい食材を取り寄せ、腕を振るう。
 そんな大将の言葉通り、山田屋が使うのはタグ付き、正真正銘地元産・高級ブランドの松葉がにである。仕入れ先は「マルナカ」の愛称で親しまれる中村商店。賀露港で100年続く老舗仲買人だ。その「海の恵みの目利き」とタッグを組んだ大将の料理は、「これぞ松葉がに」の王道をいくうまさ。蟹味噌、蟹刺し、焼き蟹、蟹すきの4品をいただいたが、言葉をさし挟む間ももったいなく、無言で黙々と食した次第である。おなかをさすりながら窓外に広がる海を眺めやるひととき、幸福感で満たされる。


料理されたのは800gの松葉がに。刺し身は、箸先に醤油をつけて、ポトリと1滴たらして食べる。
蟹味噌。そのままでもおいしいし、焼き蟹の薬味にもいい。左は蟹味噌豆腐の木の芽添え。新鮮な味わいだ。
焼き蟹は炭火で焼く。甘みがいっそう増し、一口食べたら、もう止まらない。
蟹すきは自家製、秘伝、まろやかな味わいのポン酢でいただく。小売りしているので、お土産にどうぞ。
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