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柏井壽「食語の心」第92回
作家 柏井壽
食レポ
コロナ禍はさまざまなところに影響を及ぼしているが、長く続く会食自粛は、グルメ番組の様相をもがらりと変えた。コロナ禍以前はテレビのグルメ番組と言えば、人気の店、はやっている店にタレントが出向き、客席で料理を食べながら、大げさなアクションを交えつつ、感想を述べるというシーンが、お決まりになっていた。

 しかしながらコロナ禍においては、店へロケに行くとなると、感染のリスクが生じる。スタッフ、タレント、店の従業員の三者が絡むロケをせずにグルメ番組を作るには、どうすればいいか。

 行き着く先は、例によってリモートである。店に設置したカメラで映像を撮り、それをスタジオで見ながら、レポーターが解説を加えるという方式だ。臨場感には欠けるが、感染リスクはなくなる。ときにはスタジオで試食するという形も取られ、苦心の跡が見受けられる。

 そんなグルメ番組だが、さらなる問題も提起される。

 感染蔓延を防ぐという目的のもと、積極的に外食を勧めるような場面はいかがなものか。自粛警察とも称される人たちからクレームが付く恐れもある。となると、顔の売れているタレントたちは尻込みしてしまう。SNSなどを通じて非難される恐れがあるからだ。そこで起用されることになったのが、グルメ通を自任する素人たちである。
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