一方で、プロの料理評論家たちにとっても、あおることで仕事が増えるという意味では、タレントたちと同じである。
新しい店ができると、いち早くはせ参じ、ブログやメディアを使って、絶賛コメントを発信する。
その店がいかに凄いか、素晴らしい料理かを、美辞麗句満載で書き連ね、決まって最後に付け足す。
「予約困難になるのは必至」と。
こうしてあおっておいて、その店での食事会を開いて、飲食店側か参加者側かのどちらか、もしくは両方から仲介手数料を徴収する。となれば、あおればあおるほど、収入は増える、という仕組みまで出来てしまった。
とある京都の割烹かっぽう店の主人は、自戒を込めて、こう嘆く。
―ええことやないのは、よう分かってるんですけど、背に腹は代えられまへん。満席になるお客さんを引っ張ってきてくれはるし。自分で予約してくれはったら、余計なお金は払わんでええのにと思うんやけど―
あおられる側にも問題がある。自ら予約する手間を惜しみ、安易な食事会を選ぶ。予約代行手数料くらいに軽く見ているのだろうが、ある意味でダフ屋的な行為に加担しているのではないかと憂う。
少しでも集客したいと願う店側と、予約を面倒がる、あるいは予約困難と諦めている客側の、両方の弱みに付け込むような食事会は、過剰なまでの店絶賛に代表される、あおりグルメの結果なのである。
繰り返しになるが、あおり運転と違って、あおりグルメには、加害者も被害者もいない。双方ともにそれをよしとしているのだから、とやかく言わずともいいのだろう。だが、その結果として、食を取り巻く環境が日々歪(いびつ)になるのは、看過できない。
店は自らの努力で集客に努め、客は手間を惜しまずに、自ら予約を試みる。そんな正常な姿に早く戻さないと、店と客の関係はますます歪んでしまう。
新しい店ができると、いち早くはせ参じ、ブログやメディアを使って、絶賛コメントを発信する。
その店がいかに凄いか、素晴らしい料理かを、美辞麗句満載で書き連ね、決まって最後に付け足す。
「予約困難になるのは必至」と。
こうしてあおっておいて、その店での食事会を開いて、飲食店側か参加者側かのどちらか、もしくは両方から仲介手数料を徴収する。となれば、あおればあおるほど、収入は増える、という仕組みまで出来てしまった。
とある京都の割烹かっぽう店の主人は、自戒を込めて、こう嘆く。
―ええことやないのは、よう分かってるんですけど、背に腹は代えられまへん。満席になるお客さんを引っ張ってきてくれはるし。自分で予約してくれはったら、余計なお金は払わんでええのにと思うんやけど―
あおられる側にも問題がある。自ら予約する手間を惜しみ、安易な食事会を選ぶ。予約代行手数料くらいに軽く見ているのだろうが、ある意味でダフ屋的な行為に加担しているのではないかと憂う。
少しでも集客したいと願う店側と、予約を面倒がる、あるいは予約困難と諦めている客側の、両方の弱みに付け込むような食事会は、過剰なまでの店絶賛に代表される、あおりグルメの結果なのである。
繰り返しになるが、あおり運転と違って、あおりグルメには、加害者も被害者もいない。双方ともにそれをよしとしているのだから、とやかく言わずともいいのだろう。だが、その結果として、食を取り巻く環境が日々歪(いびつ)になるのは、看過できない。
店は自らの努力で集客に努め、客は手間を惜しまずに、自ら予約を試みる。そんな正常な姿に早く戻さないと、店と客の関係はますます歪んでしまう。

かしわい・ひさし
1952年京都市生まれ。大阪歯科大学卒業後、京都市北区に歯科医院を開業。生粋の京都人であり、かつ食通でもあることから京都案内本を多数執筆。テレビ番組や雑誌の京都特集でも監修を務める。小説『鴨川食堂』(小学館)はNHKでテレビドラマ化され続編も好評刊行中。『グルメぎらい』(光文社新書)、『京都の路地裏』(幻冬舎新書)、『憂食論 歪みきった日本の食をあおる人 斬る!(』講談社)など著書多数。
1952年京都市生まれ。大阪歯科大学卒業後、京都市北区に歯科医院を開業。生粋の京都人であり、かつ食通でもあることから京都案内本を多数執筆。テレビ番組や雑誌の京都特集でも監修を務める。小説『鴨川食堂』(小学館)はNHKでテレビドラマ化され続編も好評刊行中。『グルメぎらい』(光文社新書)、『京都の路地裏』(幻冬舎新書)、『憂食論 歪みきった日本の食をあおる人 斬る!(』講談社)など著書多数。