なぜこれほどの高得点になるのか。むろん純粋に内容が素晴らしいのだろうが、群を抜いて点数の高い店には、ある共通点がある。
それは、店側がイニシアチブを握っているということ。
紹介制ということはすなわち、客の氏素性が知られていて、かつ紹介者は保証人的な存在でもある。となればネガティブな口コミなど投稿できるはずがない。必然的に高評価、高得点になる、というカラクリだ。このあたりのことを、次回はもう少し詳しく検証してみよう。
K屋を紹介する記事を、口コミサイトに投稿した。
良しあしはおくとして、その執念には感心するしかないが、それも束の間。デタラメを並べた投稿に唖然(あぜん)とした。
このK屋はいっぷう変わった料理を出す。最も特徴的なのは焼き鳥を客に出すとき、串から外して皿に載せるのだ。なんでも串先が歯茎に刺さってケガをした客が居たからだ。
そうで、もう20年近くこのスタイルを続けているらしい。ところがこの口コミ投稿には、「前歯を使って、串からレバーを外した瞬間、脳天を突き破る官能に震えた」と書いてあったのだ。
本当にK屋に行って食べていないことは明らかだった。
K屋は、串のまま客に出さないことに加えて、肝は焼き鳥にせず、千切り生姜(しょうが)と共に甘辛く煮付ける流儀を貫いている。
常連客からこの口コミの件を聞いたK屋の主人は、すぐさまサイトに連絡し、厳重に抗議した結果削除されたとのこと。
明らかな間違いがあったからこそ、この口コミは削除されたが、実際に行ってもいないのに、想像だけで書いた口コミは決して少なくないという。
それにしても、と思う。人はなぜ店情報を発信したいのだろうか。
行ったこともない店のことを書きたいのだろうか。
僕にはよく分からないのだが、心理学的にはよく知られたことなのだそうで、要は誰かとつながっていたいという願望がそうさせるようだ。つまりは口コミウェブサイトも、グルメブログも、どこまでが真実かどうかは疑ってかからないとダメだということ。
では評価点数はどうだろう。本連載でも繰り返し書いているが、どうにもアヤシイ。くだんの口コミサイトでは5点満点で評価がなされている。最高得点を得ているのは、六本木の和食店。なんと4・9点という高得点をたたき出している。
完全紹介制、夜は二人以上で、最低価格が3万円、という高いハードルの店にもかかわらず、口コミの数は150を超えている。その平均値をとってもこの数字なのだから、ほぼ全員が満点近い点数を付けたことになる。
なぜこれほどの高得点になるのか。むろん純粋に内容が素晴らしいのだろうが、群を抜いて点数の高い店には、ある共通点がある。
それは、店側がイニシアチブを握っているということ。
紹介制ということはすなわち、客の氏素性が知られていて、かつ紹介者は保証人的な存在でもある。となればネガティブな口コミなど投稿できるはずがない。必然的に高評価、高得点になる、というカラクリだ。このあたりのことを、次回はもう少し詳しく検証してみよう。
それは、店側がイニシアチブを握っているということ。
紹介制ということはすなわち、客の氏素性が知られていて、かつ紹介者は保証人的な存在でもある。となればネガティブな口コミなど投稿できるはずがない。必然的に高評価、高得点になる、というカラクリだ。このあたりのことを、次回はもう少し詳しく検証してみよう。
K屋を紹介する記事を、口コミサイトに投稿した。
良しあしはおくとして、その執念には感心するしかないが、それも束の間。デタラメを並べた投稿に唖然(あぜん)とした。
このK屋はいっぷう変わった料理を出す。最も特徴的なのは焼き鳥を客に出すとき、串から外して皿に載せるのだ。なんでも串先が歯茎に刺さってケガをした客が居たからだ。
そうで、もう20年近くこのスタイルを続けているらしい。ところがこの口コミ投稿には、「前歯を使って、串からレバーを外した瞬間、脳天を突き破る官能に震えた」と書いてあったのだ。
本当にK屋に行って食べていないことは明らかだった。
K屋は、串のまま客に出さないことに加えて、肝は焼き鳥にせず、千切り生姜(しょうが)と共に甘辛く煮付ける流儀を貫いている。
常連客からこの口コミの件を聞いたK屋の主人は、すぐさまサイトに連絡し、厳重に抗議した結果削除されたとのこと。
明らかな間違いがあったからこそ、この口コミは削除されたが、実際に行ってもいないのに、想像だけで書いた口コミは決して少なくないという。
それにしても、と思う。人はなぜ店情報を発信したいのだろうか。
行ったこともない店のことを書きたいのだろうか。
僕にはよく分からないのだが、心理学的にはよく知られたことなのだそうで、要は誰かとつながっていたいという願望がそうさせるようだ。つまりは口コミウェブサイトも、グルメブログも、どこまでが真実かどうかは疑ってかからないとダメだということ。
では評価点数はどうだろう。本連載でも繰り返し書いているが、どうにもアヤシイ。くだんの口コミサイトでは5点満点で評価がなされている。最高得点を得ているのは、六本木の和食店。なんと4・9点という高得点をたたき出している。
完全紹介制、夜は二人以上で、最低価格が3万円、という高いハードルの店にもかかわらず、口コミの数は150を超えている。その平均値をとってもこの数字なのだから、ほぼ全員が満点近い点数を付けたことになる。
なぜこれほどの高得点になるのか。むろん純粋に内容が素晴らしいのだろうが、群を抜いて点数の高い店には、ある共通点がある。
それは、店側がイニシアチブを握っているということ。
紹介制ということはすなわち、客の氏素性が知られていて、かつ紹介者は保証人的な存在でもある。となればネガティブな口コミなど投稿できるはずがない。必然的に高評価、高得点になる、というカラクリだ。このあたりのことを、次回はもう少し詳しく検証してみよう。

かしわい・ひさし
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。