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最終日は赤木氏いわく「実に能登らしい天気」に。強風、冷たい雨、突然の大きな虹など、めくるめく天気。日本海に大きく張り出している能登半島の厳しい環境と、それを受け止める大地の偉大さを感じながら、満ちた月の輝きのようにぬくもりある美しい料理を楽しんだ。
「実は最初に『試作した料理を写真に撮って、見せ合うのはやめよう』と決めたんです。これが、とても刺激的で面白かった。本番前日の仕込みの時に、お互いの料理を初めて見たのですが、それぞれの料理は各人の個性が出ていて、コースとしてまとまっていたんです。驚きました。今、店では9割以上県内産の食材を使っていて、生産者さんのところをよく訪ねています。畑とか山に行くと、自然とこんな料理が作りたいと浮かんでくる。東京にいた頃は、脳みそをぎゅっと絞り出すみたいにして考えていましたが、今はそんな苦労がないんです」
 料理を通した生活をする中で、都会にはないインスピレーションを得られるという能登。平田氏は「料理人を成長させる土地」とも話した。
 出身地も、これまで歩んできた道も異なるシェフ3人が、能登の食材を用い、文化、景色をも盛り込んだ料理を提供した。関わったすべての人たちのつながり、料理人の真摯(しんし)な思いやぬくもり、そして楽しさが皿の上で表現された。この思いはゲストにも伝播(でんぱ)し、その背後にあるものまでを体感したに違いない。
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