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濃い色のクロス、シンプルな椅子が現代的な雰囲気を作りつつ、骨董のたんす、丸くかたどった厨房(ちゅうぼう)と客席との間の出入り口が中国料理店らしい印象を加える。出入り口の棚に整然と並ぶのは、店のテーマでもある中国茶の茶器。
中国の食文化では冷たい品は口にしない
中国には本来冷たい料理はない。「冷菜といっても、実際は常温。彼らは体を冷やすのを好まない」そうだ。近年こそ氷菓や氷入りのドリンクも人気だが、本来、医食同源が根付いている中国の食文化では冷たい品は口にしない。
「その一方で、日本では夏、そうめんに氷を敷くなど、思いきり冷やして涼を表現します。熱いものは熱く、冷たいものはしっかり冷やすことを日本人は好む。その感覚は尊重したいので、当店では冷か温か、温度にはメリハリをつけています」
 また「料理とのペアリングで中国茶を提供していますが、そこでも涼を意識します」とも。中国茶は、「和魂漢才」とともに川田氏が店のテーマに掲げる重要な存在。
「夏は発酵度合いの低いお茶が合う。冷茶にすることも増えます」
 なお、お茶の淹(い)れ方でも独自の方法を追求する川田氏。例えば燻製(くんせい)香が特徴のラプサンスーチョンは、茶葉に45℃の湯を加えて30分間おいた後、氷温でまる2日間おく。
「こうすると旨みがしっかりと出ながら渋みは出ず、独特の燻製香もとても上品に香るようになります」
 お茶の個性を尊重しながら、今までにない方法にも柔軟に取り組む。「お茶は究極の食材だと思うのです。医食同源の本質を突いている。きっと、死ぬ間際に口にしてもおいしく感じられ、心身を癒やすはず。そんな料理を目指しています。お茶は偉大な先生ですね」

●茶禅華 東京都港区南麻布4-7-5
TEL03-6874-0970 sazenka.com
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