
この5月に、前店舗と隣接する場所に小さなビルを建て、新店舗をオープン。1階はカウンター、2階はカウンターとテーブル席、3階は個室という造り。コンクリートを活用した前店舗の雰囲気を引き継ぎつつ、随所に木を配した温(ぬく)もりある空間。
教わったままを繰り返すのではなく、工夫をしてこそ。
「夏のアワビというと生のまま冷やし、大ぶりの角切りにしてお出しするのがかつては定番でした。でも、あれは固くて歯の弱い方は食べられない。それで、今回は蒸しアワビにしています。蒸す時間は20分。これも日本料理の世界では、長らく『アワビは5時間蒸す』なんて言われていましたが、あれは、『新鮮なものは生で。鮮度が落ちたら加熱』という冷蔵庫のない時代の習慣が残っているだけ。鮮度の落ちたアワビだから長時間加熱しないと柔らかくならなかった。今は『鮮度のよいものを加熱して、さらに味を上げる』ということができる贅沢な時代なのです。それを楽しみましょう。それに5時間も蒸したら風合いが消えてしまう。時代に応じた最適の調理を考えるのが料理人。教わったままを繰り返すのではなく、工夫をしてこそ、です」