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食語の心 第49 回
作家 柏井壽
京都 食の値段
今から14年ほども前のことになるが、京都本の新たな切り口として「京都の値段」という言葉が頭に浮かび、そのまま書名にして単行本で刊行した。
 京都という雅(みやび)な地を値段で表すのは、いかにも無粋ではないかと思わぬでもなかったが、大いに話題を呼び、即重版が掛かるほどの人気本となった。
 1年ほど前にその改訂版を新書の形で出版したが、10年以上もの時間は、当然ながらその“値段"を大きく変えた。
 それは物価の上昇率にシンクロするという単純な図式ではなく、ある意味で京都の価値と連動するような、極端な上昇率を見せるものもあった。
 しかし中には当時と全く同じ価格のものもあり、その差はどこからくるのか検証してみた。
 安価なもので言うと、「近喜商店」という店の“ひろうす"がある。“ひろうす"とは関東で言うガンモドキ。
 水分を抜いた豆腐に、すりおろした山芋を混ぜ、油で揚げたものを言う。精進料理を始めとして、いわゆる京のおばんざいにも欠かせない食材である。
 これが14年前の本では50円だった。そして昨年度版では60円。
 2割も上がった、と言えなくもないが、わずか10円しか上がっていないとも言える。消費増税などをも考慮に入れると、実に良心的だと言わざるを得ない。
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