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点数は無視している。なぜならそこに、恣意(しい)的な操作が加えられているからだ。同じ点数を付けても、ライトユーザーのそれは軽視され、ヘビーユーザーの点数は重要視され、即反映されるそうだ。
 一見すると合理的なようでいて、よく考えれば極めて公平性を欠く手法である。
 ここで言うヘビーユーザーとは外食回数、投稿の多い人のことだと思われるが、そういう言わば外食マニアのような人が、必ずしも公平公正な判断を下せるとは限らない。
 最近の一部の外食マニアは、料理人や店のオーナーと親しくなりたがる傾向があり、そうなると情が移ってしまう。
 あるいは、外食マニアとして、高点数を付けるべきという店もある。
 京都に住んでいるとよく分かるのだが、神格化されている店の点数は異常に高い。確かにいい店ではあるものの、万人に向くような店ではないところを誰もが絶賛し、高い点数を付けている。
 おそらくは、その店を評価しないと、味オンチ、店オンチだと思われそうだから、という理由からだろう。
 たとえば京都で一番点数の高い店は、すべて店側が主導権を握り、客はそれをありがたくいただく、というシステムで、かつ茶懐石の作法にのっとったスタイル。茶の湯になじみがない客にとっては、どこかしら窮屈さを感じてもおかしくないはずだが、そういうネガティブな口コミは一切ないようだ。百人が百人、こういう食事がベストだと思うなら、茶道人口がもっと増えてもいい。
 この店を褒めないと食通からバカにされるのではないか。そんな強迫観念とでも言うべきものが蔓延(まんえん)しているのが、口コミサイトにおける点数や口コミに反映した結果だと認識している。
 そこさえ押さえておけば、口コミサイトは店セレクトに大いに役立つ。それは写真によって、明らかにされる情報。
 写真というものは情も挟まないし、恣意的に変化したりもしない。ありのままを写しだしてくれる。写真はウソをつかない。その話は次回に。
かしわい・ひさし
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。
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