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食語の心 第44 回
作家 柏井壽



京都の洋食
 京都と洋食。多くの人が抱く京都のイメージとは、とうてい結びつきそうにない。
 日本を代表する古都。京都に最も似合う食といえば和食。誰もがそう思うだろうが、実は京都は、飛び抜けて洋食のおいしい街でもあるのだ。
 洋食といえば、外国との交流が盛んだった港町で発展してきたという一面がある。横浜や神戸がその代表で、無論のこと、今もそこにはおいしい洋食屋がある。
 ではなぜ、港町でもなく、海から遠い京都の洋食が、優れておいしいのか。 
 まずは江戸末期のころまで、歴史をさかのぼらなければならない。
 幕末に活躍した志士の一人に、坂本龍馬がいる。土佐で生まれた龍馬は紆余(うよ)曲折を経て、長崎を訪れ、やがて居を定める。そして、日本最初の商社と言われる「亀山社中」を結成する。
 その「亀山社中」の遺構は今も残されていて、記念館として公開されている。
 風頭山(かぜがらしやま)に立つ記念館のあたりは、市内を一望のもとに見渡せる景勝の地で、界隈(かいわい)には伊良林(いらばやし)という地名が付いている。
 その伊良林の地に、日本最初の洋食屋が生まれたことは、存外知られていない。
 店の名は地名をとって「良林亭(りょうりんてい)」。開店したのは、鎖国令が解かれてから5年が経った1863年のこと。主人の名は草野丈吉(じょうきち)。
 その2年後となる1865年に、龍馬は「良林亭」のすぐ近くで「亀山社中」を結成する。
 羽織袴(はかま)にブーツを履くほどの、ハイカラ好きの龍馬が「良林亭」を見過ごすはずがない。一説には、「良林亭」があったから、そのすぐ近くに「亀山社中」を定めた、とも言われる。草野と龍馬が親交を深めたのは言うまでもない。
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