世界の贅沢、NILEの贅沢

三つ星獲得の方程式　Le Cinq

Text Yukino Kano

（左）アペリティフとともに供されるアミューズブッシュ。驚きと美しさをたたえ、これから始まる食事を盛り上げる　（中）フランス料理の定番、オニオングラタンスープを、最先端技術を使って新解釈した、ル＝スケールの代表作　（右上）世界的フロリスト、ジェフ・リーサムによる花の美しさが印象的な優美な内装。
（右下）フランスを代表する偉大な料理人、クリスチャン・ル＝スケール。©Stephane de Bourgies

2014年は、パリのガストロノミー界が大きく揺れた年であった。18世紀にまで歴史を遡る名門レストラン「ルドワイヤン」の経営権を、21世紀前半のフランスを代表するトップシェフ、ヤニック・アレノが手に入れ、自身の旗艦店としたと同時に、「ルドワイヤン」で12年間三つ星をキープしていたクリスチャン・ル＝スケールが、８月、パリの最高級ホテルの一つ「フォーシーズンス・ジョルジュ・サンク・パリ」の総料理長に着任。かつてこのホテルのメインダイニング「ル・サンク」が得ていた三つ星の再獲得、というミッションを公式に掲げて就任したル＝スケールは、その言葉通り、２年目にして見事、この華やかでエレガントなレストランに三つ目の星を掲げ直した。
　「ルドワイヤン」で12年間も三つ星を持ち続けていた超実力派料理人には、どうすれば三つ星を獲得できるか、という道が見えていたのだろう。ホテルGMの全面的な協力を得て、もともと最高クラスだったスタッフ能力をさらに高め、値段に糸目をつけずフランス中の最上の食材を選りすぐり、時にはクラシックなソースの威風堂々とした魅力を、時には食材の見事な味わいをブリュットに楽しませるシンプルなスタイルを、そして時には最先端の技術を使って驚きと楽しみに満ちた作品を、まるでマジシャンのように次々と発表。就任と同時に精力的に繰り広げられた圧巻の新作の数々に、パリの食通、ジャーナリスト、そして世界中から訪れるゲストは、絶賛の拍手を送り続けた。
　結果、各種レストランガイドで最高の評価を受け続け、2016年２月１日、ミシュランフランス版の発表会で、２軒の新三つ星シェフの一人として、その名前が高らかに告げられたのだ。
　2000年にオープンした「ル・サンク」は、第二次黄金期に入ったところ。自信に満ち溢れた脂ののった実力派シェフの味を、今この瞬間に味わいたい。

●ル・サンク　www.restaurant-lecinq.com