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食語の心 第35回
作家 柏井壽
生き物はすべて、それなりの時間を掛けて成長する。
 たとえば米。種をまいてから収穫するまでに長い時間と手間が掛かる。春に種をまき、健康な苗を育てる。初夏ともなれば、田んぼをたがやし、肥料をまく。田植えの準備である。代かきをし、ようやく田植えができる。植えた後も大事な仕事が待っている。水の多寡を管理し、雑草から稲を守り続けねばならない。梅雨のころには、田んぼに溝を掘り、中干しをし、追肥を与える。そして夏。病気や害虫から稲を守るという厄介な仕事が続く。待ちわびた秋になり、穂が出てから稔(みの)る様をじっと見守る。ようやく稲を刈ることができる。が、まだまだこれで終わりではない。稲を干し、玄米にすることで、ようやく米としての形になる。
 八十八と書いて米という字になる。つまりは八十八もの手間が掛かるから、この字になったというが、実際にはそれ以上の手間と日にちが掛かっているはずだ。
 ではそれを、もっと短期間で、手間も減らして、米ができないか。答えは否である。
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