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湯葉と桜海老の玉子とじご飯
神田裕行 真味只是淡
第十九回
Photo Masahiro Goda
ふぐの魅力は鉄刺(てっさ)に尽きる。
 ふぐは当たると死ぬから鉄砲、その刺し身だから鉄刺と呼ばれる。だが、そもそも虎ふぐの毒のテトロドトキシンは、血中に含まれているのだから、白くつややかな鉄刺で死ぬ人はいない。多くの悲劇は猛毒で知られる肝に手を出したゆえであろうから、自業自得とも言われるが、禁じられた味わいが常に魅力的なこともまた然(しか)りだ。ふぐ肝を鉄刺に絡め、ポン酢で食べるのがたまらなく旨いらしい。「らしい」というのは、まだ本物のふぐ肝を、このようにして食べたことがないからだ。
 東京には御禁制のふぐ肝の代わりに、鉄刺にあんこうの肝を絡めて食べさせる店が多くあり、いずれも高い人気だが、これには食指が動かない。ふぐの身はあん肝を絡めなければ旨くないのだろうか? それならば天然のふぐの身を高いお金で買うことに意味はないのではないか? あん肝に頼らなければならないのなら、かわはぎの肝あえのほうがずっと上等ではないか。最上の真味がふぐの身の中にあるならば、それをシンプルに、ダイレクトに味わうことが大事ではないのか? と、思うがゆえに。
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