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天海老昆布締め 鈴子 新米
志賀直哉の『暗夜行路』の一節に女性のことを形容して、どこか遠い北の海でとれた蟹を思わせるところがあったとあるが、とかく蟹の美味は、女性にたとえると分かりやすいのだ。 
 例えば、毛蟹は万人に愛されチャーミングな甘さを持ったマリリン・モンロー。
 上海蟹の白子の妖艶(ようえん)さは、傾国の美女として名高い夏姫や、楊貴妃になぞらえると、あの濃厚さも好ましく楽しい。
 さすればズワイガニ、しかも私の好む松葉がにとなると、やはり品格と包み込むような甘さのあるグレース・ケリーと言いたいところだが、いかがだろうか。
 ワインの世界にはボルドーで始まり、ブルゴーニュに行き着くという道筋があるように、蟹も毛蟹やワタリガニなどを経て、ズワイガニにたどり着くというのもあるように思う。分かりやすい世界から、分かりにくい世界に、足を踏み入れるとなかなか抜け出せないのが人情なのかもしれない。
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