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食語の心 第31回
作家 柏井壽
東京駅では、実にたくさんの駅弁が売られている。特に八重洲側には「大丸」の地下食品売り場もあり、はてどこで買えばいいかと迷うほどだ。いわゆる駅弁の他に、近年は名店の弁当も並び、まさに百花繚乱(りょうらん)という言葉がぴたりとはまる。
 幕の内系、釜飯系、肉丼系、海鮮寿司系などなど。バリエーションも豊富で、目移り必至である。
 毎回あれもこれもと欲張り、幾つもの弁当を食べ比べてみての結論。それはやはり〈餅は餅屋〉という話。
 どういう意味かと言えば、電車の中で食べる駅弁としては、いかなる名店であっても、本職の駅弁屋には到底敵かなうものではないということなのだ。
 その典型例が、前回書いた『崎陽軒(きようけん)』の「横濱チャーハン」。
 焼売(シウマイ)と焼飯の組み合わせ。さほど複雑なものではない。これならウチの店でも出来る。そう思ったのか、中華の名店が同じ取り合わせの弁当を作って売り出した。仮にA店としようか。
 値段は「横濱チャーハン」の二倍近い。A店は高級中華で知られる店だから当然だとも言える。
 僕はこのA店の中華も大好きで、何度も足を運び、焼飯も焼売も本当に美味しいと思ってきたので、大きな期待を持って、弁当を開いたのである。
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