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食語の心 第30回
作家 柏井壽
旅に出ることが多い。
 旅の愉(たの)しみといって、その第一は間違いなく〈食〉である。旅先で、その土地ならではの美味に舌鼓を打つのは、何よりの愉しみ。そこに地の酒でも加われば、何もいうことはない。
 ここで、しかしひとつの悩みが生じる。それはおおむね、帰途のこと。
 たとえば昼前後に、その地を離れて帰途に就くとしよう。昼食をどうするか、で僕は大いに悩むのである。
 その地の名物料理を出す店で、最後の昼餐(ちゅうさん)とするか、もしくは駅弁を買って、車中食とするか。
 かつては列車で移動するときだけの悩みだったのが、最近では〈空弁(そらべん)〉なるものも出現し、飛行機に乗るときも、同様の悩みが生じるようになってしまった。
 だけではない。近年、高速道路のサービスエリアでも〈速弁(はやべん)〉と称して、土地の名物料理を盛り込んだ弁当が売られていたりもするので、クルマで移動するときにも悩まされることになった。
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