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賀茂茄子と虎魚空揚げ
京都の特権は清流だけではない。すばらしい土壌を持つ丹波、豊穣な海を持つ丹後、琵琶湖からは鮎や鯉。まるで京都を支えるかのようなすばらしい食材の宝庫が周りに控え、長い歴史を持つ建築物やそこに生きる人々が文化と歴史を刻んでいる。
 そこから生まれる京都の空気感こそが私たちを引きつけるのだ。
 細い路地の向こうに小さな行灯を見つけてワクワクしたり、すれ違う舞妓さんに振り向かない人がいるだろうか?
 路地を巡りお気に入りの暖簾をくぐり、板場に凛とした板前さんを見つけて、ああ京都に来て良かったと席に着くのだ。 京料理には、なぜか山椒がよく似合う。土産にいただくちりめん山椒の影響か、京都の蒸し暑い気候のせいか。春の花山椒から秋の新山椒まで、とにかくピリリと私たちを楽しませてくれる。
 山椒で名高いのは兵庫県の朝倉山椒で、程よい辛みと棘のない枝が特徴だ。花山椒なら和歌山の葡萄山椒が名高いし、飛騨の高原でも良品が出ているが、主に京都に出荷してのち我々の口に届くようだ。
 私が特に好むのは、青干しの山椒の皮で、これを粗く砕いて鱧に合わせる。鱧は祇園祭の代名詞で、湯引いて梅肉が定石だが、ナマを刺し身に焼き粉カラスミとともにいただけば、冷酒の盃を唇に運びたくなる。
 夏が旬の虎魚(おこぜ)の空揚げにも、山椒はなくてはならない。乾から煎い りした餅粉をまぶしてからりと揚げて、添えたのは今が盛りの賀茂茄子と歯ごたえも楽しい葛切りの素揚げである。茄子の甘みにも山椒は実によく合うからだ。
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