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(上)身はふっくら、皮はパリパリ。ローストされた尾が鮎の存在感を主張する。骨でとったブイヨンには鮎独特の苦みがほんのりあって、香りがまたすばらしい。メロンの果肉は皮に近い部分を使っているところがミソ。
(下左)シェフ・エグゼクティブのリオネル・ベカ(左)とシェフ ド キュイジーヌの村島輝樹(右)は、エスキスのチームワークの要。村島が鮎に関する知識と経験を余すところなく伝授したという。鮎の扱いに年々自信を深めるリオネルである。
(下右)客が鮎に期待している、その「記号」ははずせないところ。だから、“山の一皿”は鮎の炭火焼き。日本人の好きな食べ方をそのままに、鮎はアルプスへと旅に出たのだ。
この料理の鮎は炭火焼き。日本人が好んで食べるスタイルを踏襲している。それは「日本の伝統や習慣という鮎にまつわる『記号』を大切にしたい」という思いの表れである。
 もう一品は、マリネにした鮎。「鮎はフレッシュさを引き出そうとすると、期待値以上にフレッシュになる潜在力を秘めた魚。そのフレッシュな部分を強調した」そうだ。
「鮎は三枚におろして、メロンとキュウリ半々のマリネ液に3時間ほど漬けてから、一晩、冷蔵庫で寝かせます。皮を乾燥させたいので。その鮎をサラマンダーでミ・キュイ、“半生"状態を目指して焼きます。もちろん、骨や肝も使いますよ、ブイヨンにね。ローストした骨に超軟水を加えて一度沸騰させ、しばらくそのままおいてから再度ゆっくりと火を通す。この時、生の肝に泡立てた卵白を混ぜたものを入れるのですが、これが灰汁(あく)を吸着して、上品で濁りのないブイヨンにしてくれます。あと付け合わせは、バン・ド・パイユという野性味あふれる白ワインでマリネしたメロンや、少しえぐみのある食用ホオズキ、アニスのスプラウト、シーアスパラ、グリーントマトの種など。鮎は水苔(みずごけ)を食べるので、こういうものがよく合います」
 前の一皿が“山仕立て"で、こちらは“川仕立て"といったところか。共通するのは、エクルビスにしろメロンにしろ、リオネルが「鮎と同じDNAを感じた」フランスの食材を、日本の鮎と一体化させていることである。彼によって「想像の翼」を与えられた鮎は、アルプスへと旅に出てなお、日本人が古来好んできた伝統の味わいをしっかり主張する。

●エスキス
東京都中央区銀座5-4-6 ロイヤルクリスタル銀座 9F
TEL03-5537-5580 http://www.esquissetokyo.com
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