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虎白の総料理長の小泉功二は、「今年の“新作”を考えるのはこれから。7月まではトリュフソースでいきます」と意欲的。自身が毎年変わる鮎料理を楽しみにしているし、客も同じ気持ちで待っている。その期待を裏切らないだろう味わいに今からわくわくする。
そして2品目は「揚げ鮎の焼きトウモロコシ寄せ」。背越しにした鮎に薄く小麦粉をつけて揚げ、細かく砕く。その一部と、出汁醤油を塗って炭火でこんがり焼いたトウモロコシ、ゼラチンを溶かした牛乳をミキサーにかける。そのまま冷蔵庫に入れ、自然な柔らかさに固める。それに土佐酢のゼリーに柚をかけ、揚げ鮎を散らす。これも虎白でしか味わえない鮎料理である。
「トウモロコシのほうには、リーキ(ポロネギ)を炒めて香りを出し、牛乳でペースト状にしたものもほんの少量入っています。鮎をカリカリにして砕くことはあまりないんですが、他の小魚とは全く違うワタの旨み、独特の食感と香りが出ます。特に鮎の季節も後半に入ると、炭焼きやご飯とは違った形で鮎料理を楽しみたくなるんじゃないかなと思って、考えた料理です」
 トウモロコシの甘みと鮎の苦みがやさしく溶け合い、ゼリーの酸味に残暑の涼風のようなさわやかさを感じる。柔らかな食感とカリカリした鮎の歯触りがまた心地よい。
「僕は料理人になるまで、食べたことのないものだらけ。鮎もそうでした。4年前くらいから本格的に勉強をしようと、京都に行ったり、築地に入る天然の鮎を1カ月間毎日食べ続けたり。とにかく鮎を知らないと、形だけ変えたところでおいしい料理はできないと、いっぱい食べました。それで分かったのは、鮎は奥が深いなということ。時期や川によって味が全然違うんですよね。天然に関しては本当に振れ幅が大きい。難しいけど、天然の鮎を本当にいい状態でコンスタントに使いたいですね」
 そんな小泉は「おいしい鮎情報」をキャッチしては食べに出かける勉強を今も続けている。鮎だけではない。料理全般そうだし、美術展に出かけるなど、「本物に触れる時間」を作ることに努めている。「料理人として、普遍的な人間の感性、感覚を磨いていかなくてはいけない」と思うからだ。虎白の今までにない料理はその努力の賜物(たまもの)なのである。

●こはく
東京都新宿区神楽坂3-4
TEL03-5225-0807
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