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江戸前の天ぷらと胡麻油
 天ぷらは江戸時代に流行したファストフードである。歌川広重の浮世絵(「東都 名所 高輪廿六夜 待遊興之図」)にもあるように、庶民が屋台で立ち食いをしていたのだ。日常的に人が集まる橋のたもとや、縁日や行事などには、うなぎ屋、すし屋、そば屋の屋台が軒を連ね、中でも天ぷら屋は人気だったのである。天ぷらが屋台料理として定着したのは、町人が住む長屋は火事が多く、油を高温に熱する天ぷらの屋内営業が禁止されたため。それが結果的に橋のたもとなど気軽に立ち寄れる場所に屋台を出すという江戸独特のスタイルになった。屋台には、熱々に揚げた天ぷらが並べられており、あとは大きなどんぶりに入った天つゆと、大根おろし。客は好みの天ぷらを選んで、自ら串を刺して天つゆに浸し、大根おろしを載せて食べたという。ネタは決まって江戸前のエビ、アナゴ、コハダ、貝柱など魚介類。これを胡麻油で揚げたものこそ、江戸前天ぷらなのだ。
 現代、天ぷらといえば高級店が多い。そして“揚げもの"と相性がいいシャンパーニュで天ぷらを楽しむ人たちが増えている。“江戸前"なら、エビ、アナゴといった甘みのある魚介がネタであるため、シャンパーニュと好相性だ。夏こそ、スタミナがつく江戸前天ぷらと冷えたシャンパーニュで。
エスキス 支配人兼シェフソムリエ
若林英司(わかばやし・えいじ)
1964年長野県生まれ。小田原「ステラ マリス」、恵比寿「タイユバン・ロブション」のシェフソムリエを務め、「レストラン タテル ヨシノ」の総支配人に。2012年から現職。
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