PAGE...1|2
書評家が作家を友だち呼ばわりすることなど皆無に等しいが、グルメブロガーは決まって、料理人をちゃん付けで呼んだりして、親しさをアピールするのも特徴的で、この辺りがアマチュアの緩さなのだが。そろそろ〈プロ〉の基準を明確にしないと、食の世界は〈プロ〉だらけになってしまう。
 真の〈プロ〉はそんな安易なものではないはず。道を極めた者だけが、そう呼ばれてしかるべき。
 そして食の世界には、料理家、もしくは料理研究家という肩書を持つ、プロもどきのアマチュアが跋扈している。
 以前にも書いたと思うが、この手の肩書ほどアヤシゲで不確かなものはない。繰り返し述べているが、こういうことは食の世界だけである。
 スポーツ、芸能、文芸など、どんなジャンルであっても、研究家を名乗るためには、それ相応の経歴を持ち、それなりの成果を上げなければならない。勝手に名乗ったところで、誰も相手にしないのだが、料理だけは、どうやら別のようだ。
 先の番組で〈お取り寄せのプロ〉なる人物が登場するのだが、何をもってして〈プロ〉と認定したのか、さっぱり分からない。「一年に三百回以上もお取り寄せするという○○○さん」と紹介されるのだが、その気になれば、一日でもできる。そんなことがプロの証しだとは笑止千万。
 たくさん食材を取り寄せて、それを料理してブログに書くうち、目を付けたメディアが、おだてあげてプロに仕立てる。おそらくタダ同然のギャラで喜んで露出するだろうから、両者の思惑は一致する。
 かくして〈プロ〉という名の素人が食を語り、似非料理を披瀝し、多くの消費者が鵜呑のみにしてしまう。
 悪しき流れはとどまることを知らず、気が付けば、食の世界は素人だらけになってしまっている。
 少しばかり、言葉が過ぎるのをお許しいただけるなら、料理人たちも同じ流れになってきていると言わざるを得ない。
 グルメブロガーさんたちが、つぶさに報告してくださるので、店に行かずとも料理のあれこれが分かる。
 器の選び方、盛り付け、料理内容。どれ一つとして、プロらしさを感じさせない店が日々増えている。その話は次回に。
かしわい・ひさし
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。
PAGE...1|2
LINK
GOURMET
食語の心 第97回
>>2021.9.17 update
GOURMET
食語の心 第101回
>>2022.2.21 update
GOURMET
食語の心 第54回
>>2017.10.18 update
GOURMET
食語の心 第71回
>>2019.3.18 update
GOURMET
食語の心 第25回
>>2015.5.15 update

記事カテゴリー