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(左)世界を飛び回る銭屋2代目の髙木慎一朗氏(左)と、料理長として店を守る弟の二郎氏。二人三脚で加賀料理の発展に取り組む。
(右)アワビのステーキは銭屋の名物料理。大鍋にアワビを100〜130個一度に入れ、ふっくらと煮含める。提供前に蒸し、焼く。煮る技術でアワビを最大限に旨み豊かに仕上げる。
本質を極める加賀料理人の真髄
日本料理 銭屋
 創業45年の料亭、銭屋。2代目の髙木慎一朗氏は海外のトップシェフと国内外でコラボレーションするのみならず、欧米、アジアや中東の各国から招聘(しょうへい)され日本料理と加賀料理を伝える料理人だ。
 髙木氏は、海外からの取材で「なぜ金沢は食文化が豊かなのか?」と聞かれたことがあるという。
 「素材が豊かなこと、そしてパトロナージュの文化があるからだと答えました。江戸時代は前田家の文化政策、明治以降は商人、つまり旦那衆の力添えがあった。旦那衆はお茶や能に通じ、一軒は贔屓(ひいき)の料理屋を持っている。文化を守るのが旦那たるもの、と心得ていたのです。
 一方、職人の側もお金をもらって技術を提供する緊張感がある。プロとして対価をもらえる仕事をしているか? と常に自問しながら技術を深めるわけです。こうした全体のパッケージとしての文化があるから、深い食文化が育まれたのではないでしょうか」
 また、金沢人の特徴を「伝統を大事にしながらも、非常に新し物好き。ある意味、多重人格」と笑う。
 伝統と未来をダイナミックに共存させるのは、金沢人の得意技だ。髙木氏の海外での活動は、まさに伝統的な日本料理の未来への在り方を志向したもの。髙木氏の料理でも、伝統と未来は同居し、調和している。
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