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シラスの錦糸和え
神田裕行 真味只是淡
第九回
Photo Masahiro Goda 文・神田裕行
初鰹芥子(はつがつおからし)がなくて涙かな
 元禄の絵師・英一蝶(はなぶきいっちょう)が三宅島に流されていた時に詠よ んだとして伝えられるこの句にもあるように、江戸時代の市井の人々は、鰹には辛子を添えて賞味した。はずである。
 鰹にはニンニクやら生姜やらとさまざまな薬味を合わせるが、鰹の生臭みを極限まで消し去り、かつ甘みを引き立て、コクのある味わいにするならば、辛子が最も効果的であると思う。
 マグロをあまり好んで食べなかったこの時代、黒潮が運んでくれる鰹は江戸っ子にとっても、島の人たちにとっても、貴重なたんぱく源でもあったことだろう。
 黒潮は、東シナ海から北上しトカラ海峡を経て太平洋に入り、日本の南岸を通り房総半島に抜けるが、この海流がもたらす魚類は実に多様で日本の漁業に大いなる影響を与えている。が、実は黒潮は高温貧栄養素であるゆえ、黒潮自体には魚を育てる力はなく、その海流に乗って流れるプランクトンを追って魚群が来るというのが正解らしい。
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