


(上)沖縄らしい赤瓦の「美榮」外観。建築、器、料理、調度品に至るまで、琉球文化を肌で感じられる店である。※現在、琉球伝統芸能鑑賞を含むプランは準備中。(左)美しい堆錦(ついきん)が施された漆塗りの器「東道盆(とぅんだーぶん)」に盛られた料理。中央は飾り切りした花イカ、上が「ぽうぽう」、左は肉(しし)かまぼこ。見た目にも美しい華やかな料理だ。(右)上は行事料理に欠かせない「らふてぇ」、下右が「なかみのお吸いもの」、左が「みぬだる」、島大根の黒糖漬、田いもの空揚げ。泡盛にも合う。
那覇市の「美榮(みえ)」では、伝統の琉球料理を味わうことができる。創業者は首里の生まれで、首里士族の伝承料理を食べて育った古波藏登美(こはぐらとみ)さん。赤瓦を白漆喰で塗り込んだ屋根に、沖縄独自の低く構えた木造建築。この伝統的な空間で、登美さんが蒐集した琉球漆器や壺屋焼、民具などの工芸品に触れながら、琉球王国時代の香りがする特別な琉球料理を堪能できるのも魅力だ。料理は、肉味噌を小麦粉の皮で巻いた「ぽうぽう」。豚の胃と腸を使った「なかみの吸いもの」は、内臓の臭みを消すために何度も水洗いをし、短冊に刻み、さらに鰹節と肉出汁をしみこませる。手間と暇を惜しまず、丁寧に仕込みをするのが琉球料理の神髄だ。「琉球では諸外国の影響で個性的な食文化が生まれました。その琉球文化を途絶えさせてはいけないという創業者の思いを、料理や空間から感じてもらえたら」と女将の古波藏德子(のりこ) さん。