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鯖のなれずし
(左)紀州なれずし 八ツ房の店主、津村孝房さん。味にこだわる職人気質だが、円熟味を感じさせる人物。
(右上)1カ月熟成させた本なれ寿司。発酵が進み、艶やかな存在感を帯びている。かつては、10月の秋祭りの期間中、常に食べられるように作られていた。作り方は家庭によって少しずつ異なる。
(右下左)本なれずしは、塩鯖に塩と酒を合わせた飯を抱き合わせ、アセの葉で包む。木桶に詰めて重石を載せて熟成させる。なれずしを熟成・発酵させている「紀州なれずし」と書かれた木桶。20℃前後で熟成させる。
さんまを丸一尾使ったさんま寿司、チャリコと呼ばれる小鯛を握った雀寿司など、和歌山ではさまざまな寿司が郷土食として食べられている。
 中でも、有田・日高地方の人々が、秋祭りになると必ず食べるのが鯖のなれずしだ。もともとは酢を使わずに、塩と酒を使って発酵させ保存食とした本なれずしが主流だった。十分に発酵が進み、表面にうっすらカビが生えたものが旨いとされ、酸味が強くクセはあるが、発酵食ならではのまろやかで奥深い味わいが特徴。今は、若い人でも食べやすいよう、酢飯を用いて一晩置いた早なれずしが多く作られている。
 御坊市にある八ツ房は、紀州なれずしの専門店だ。早なれのほか、昔ながらの本なれも作り続けている。本なれは、二枚におろした塩鯖と、塩と酒を合わせた飯に抱き合わせ、さらに香りと殺菌効果の高いアセの葉で巻いて、2~3週間程度熟成させる。「私ら地元のもんには、このくらいの本なれが一番うまいんです」と、店主の津村孝房さん。「1日でも長く熟成が進んだものを」と願い出る常連もいるという。早なれずしも、同様にアセの葉を巻いて、ひと晩置く。アセの葉は地元で採取したものを使う。
 なれずしには、脂がのった秋鯖が向く。紀州沖では昔から鯖が豊富に獲れたため、それを活用した鯖のなれずしが郷土料理となった。なれずしは、今も変わらず地元で愛されている。

●紀州なれずし 八ツ房 和歌山県御坊市湯川町丸山38-6 TEL0738-22-7793
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