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昨年から、米国のウォルマートやギャップ、マクドナルドなど、非製造業の有力企業が賃上げに踏み切る事例が相次いでいることは既知の事実である。さらに、製造業の代表格と言える自動車業界において、全米自動車労働組合(UAW)が今秋の労使交渉でリーマン・ショック後初の賃上げを要求するとしている。こうした動きは、いまだ賃上げを実施していない企業の従業員にも将来の「賃上げ期待」を抱かせることとなり、その期待は消費マインドを一段と上向かせ、実際に消費を活発化させることにつながりやすい。
 つまり、今秋以降の米国経済はいよいよ本格的な拡大局面を迎える可能性が高いと見られ、おのずと適度なペースでの利上げを正当化する条件が整っていくものと見られる。執筆時の市場において米国の早期利上げ観測はやや後退しているが、いずれは状況の変化に応じて再び盛り上がってくることとなろう。結果として、なおも当面はドルが底堅く推移するものと思われる。
 米国と日本の間で広がる金融政策の方向性の違いに趨すう勢せい判断の軸足を置けば、大きな流れは今後も円安・ドル高と考える。とはいえ、初回の米利上げに相前後していったんは対円でのドルの強気がピークアウトする場面も訪れよう。ひとたび利上げが行われれば、目先的なドルの買い材料が出尽くしとなるうえ、2回目以降の利上げは相当先のことになるのではないかと考えられるからである。言わば「一時的な調整局面」が訪れると見られるわけであるが、そのまま円高時代が再びやってくるということではない。
 当面のピークが今年6月につけた1ドル=125.85円よりも円安方向に振れるかどうかは日銀の出方にもよると思われるが、いずれにしても米利上げ実施後は一時的に円高傾向が強まる可能性があるということも、一応は想定しておきたい。
(左)THIS MONTH RECOMMEND
国として最後に必要なのは文化の力
日本屈指の画廊『東京画廊』を営む著者いわく「アートの市場はまさに世界経済の成長センターの変遷とともに移動している」。なるほど、今や世界の高額アーティストのトップテンの半分以上を中国の現代アーティストが占めるというのもうなずける。その意味で、日本はすでにアートの市場としても中心からそれ、マネーの流れの中心からもそれてしまっている。軍事力や経済力だけでなく「最後は文化の力が必要」との言葉を肝に銘じたい。『アートは資本主義の行方を予言する』山本豊津著/ PHP新書/ 907円
(右)田嶋智太郎(たじま・ともたろう)
金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。 tomotaro-t.jimdo.com
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