
(左)焼き鮎と新芋の炊き込みご飯
鮎ご飯には蓼(たで)の刻みを散らした。鮎の食感、苦みに、小芋の食感と甘み。きりりと引き締めるのは蓼の香りだ。
(右)元麻布かんだ 神田裕行
鮎ご飯には蓼(たで)の刻みを散らした。鮎の食感、苦みに、小芋の食感と甘み。きりりと引き締めるのは蓼の香りだ。
(右)元麻布かんだ 神田裕行

神田裕行 真味只是淡
Photo Masahiro Goda 文・神田裕行
元麻布かんだ 第一回
18歳で料理を始め、23歳で初めての料理長を任されて、これまでの30年近いキャリアの中で、全ての食材について研究試作を重ねた。時に閃き、時に満足し、そしてまた改良を重ねるという繰り返しの日々を過ごしてきたが、いまだかつて「この素材を完璧に料理しきれた」と思えたことは一度もない。
鮑あわびは大好物だが高級品ゆえ、本格的に研究を始めたのは、この2、3年のことである。刺し身、蒸し、煮る、焼くの基本調理から、蒸し焼き、揚げ煮などの複合調理まで試みたが、現在は昆布で包んで7時間蒸し、鮑から滲にじみ出たエキスに浸す方法に落ち着いている。5月から7月中旬までの鳴門鮑は、長時間蒸して縮まないどころか、むしろ膨らみ繊維も柔らかい。火を入れた当日は香りが豊かであり、翌日はうまみが増して甲乙つけがたい。
鮑あわびは大好物だが高級品ゆえ、本格的に研究を始めたのは、この2、3年のことである。刺し身、蒸し、煮る、焼くの基本調理から、蒸し焼き、揚げ煮などの複合調理まで試みたが、現在は昆布で包んで7時間蒸し、鮑から滲にじみ出たエキスに浸す方法に落ち着いている。5月から7月中旬までの鳴門鮑は、長時間蒸して縮まないどころか、むしろ膨らみ繊維も柔らかい。火を入れた当日は香りが豊かであり、翌日はうまみが増して甲乙つけがたい。