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ミシュランの高みは特に目指さない。二つ星、三つ星を取るためのミシュランに喜ばれる要素よりも、自由が欲しい。星の数よりも、常に満席でずっと先まで予約が埋まっているような店が理想。40席あるにもかかわらず、「ソラ」の夜の予約は3週間先まで埋まっている。吉武氏が願う店のあり方が、確実に実現しているのだ。厨房スタッフは9人。洗い場以外すべて日本人だという。
 「休憩しろと言っても、彼らは厨房から離れず仕事に没頭する。彼らが同じレベルで持っている高いモチベーションが、店の勢いをさらに増してくれるのです」
 モチベーションが勢いとなり、その勢いがゲストを魅了する。まさに、正のスパイラルがこの店には巻き起こっているのだ。
 オープンから3年。自分らしく自由である、という軸を確立させた料理を彼は、こう表現する。
 「食材を突き詰めた料理。足して足して、ではなく、たった一つの食材の価値を高めるよう意識しています。すしや和食の世界につながるエスプリだと思います」
 よりピュアに、より自由に、吉武氏の料理は進化する。自分の料理はフランス料理ではない、と考えている。彼が料理と本格的に向き合い始めた時代はすでに、スペインそして北欧が注目され、フランス至上主義ではなくなっていた。自分が良いと感じるものを、料理の国籍にとらわれず表現していきたい。そしてパリの「ソラ」は、その自己表現の場。2軒目出店の話も日本を始め諸国からあるが、フェアなどで行くのはよしとしても、100%自分の力を料理に込める自己表現の場は一つでいいと思っている。
 「他で食べたことがないおいしさ、とお客様に評価してもらえる料理を作れることに、喜びを感じます」
 そんな彼の料理に今、世界が注目している。

●Sola
12 Rue de l'Hôtel Colbert 75005
Paris, FRANCE
TEL+33 1 4 3 29 59 04
www.restaurant-sola.com
ノートルダム寺院からセーヌ川を越えたすぐ南側に店がある。パリの中でもごく古い建物が残るエリアだ。川沿いには古本屋が立ち並び、近くには名物“愛の南京錠”が鈴なりになった橋などがある。
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