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(左)白アスパラガスとラングスティーヌに柑橘(かんきつ)とパルミジャーノを香らせた一皿。
(右)焦げ目が美しいネギのグリルとツブガイ。ラビゴットソースを絡めて。アーティスティックな食器使いと盛り付けが印象的。
フランスでの修業先は、アジア食材を多用する店、最先端技術を駆使した料理を出す店、モダンスタイルのパエリアとタパスを売りにした店、と、いずれも勢いがあり、かつ強い個性を持つ店だった。クラシックな料理を出す店の扉をたたいたこともあったが、1日で、これは自分が探しているスタイルではない、とすぐに暇いとまを乞うた。そんな修業の日々で「ラストランス」にめぐり合う。
 「フランス料理はこうあるべきだ、という概念を、この店は外してくれました。自分自身が探していた答えを、この店がくれたのです。当時は非常に珍しかったおまかせコース。食材も予約客の分ぎりぎりしかし入れず、週末の冷蔵庫は空っぽ。焦がしたりして失敗しても予備の食材なんてなかった(笑)。おまかせコースは、料理人の立場からすると、一つひとつの料理により精度を極められる理想的な形。今、自分の店でもこのスタイルを取り入れています」
 フランスでの生活が1年を過ぎたころ、知人から、シンガポールで開くフランス料理店のシェフに誘われ、「Hiroki88@Infusion」のシェフに。店はオープン直後から注目され、高い名声も獲得した。が、シンガポールの客層が求める味は、フランスのそれとは微妙に異なる。自分の理想とする料理が彼らの味覚にしっくりこないことがあった。そんな折、フランスで飲食店経営を手掛ける友人から連絡が。自分はやはりパリで勝負をしたい、とフランスに戻り、2010年11月、友人と共同経営で「ソラ」をオープン。2012年には、ミシュランの一つ星を獲得した。
 他人とは違う自分、を常に模索してきた吉武氏。初めのころは、どうすれば「ソラ」にしかない料理を出せるかを考え、凝った盛り付けや和食材を多用したり、和食に近い料理をコースに組み入れることもあった。が、今は、独創的であることを大切にするよりも、自分自身が良いと感じるならそれでいい、と自然に思えるようになった。
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