
伊藤若冲 「象と鯨図屏風」 紙本墨画 六曲一双 各159.4×354.0㎝ 1797(寛政9)年 滋賀・MIHO MUSEUM
幻想の博物誌・伊藤若冲
京都の青物問屋の長男として生まれた伊藤若冲は、23歳から17年間、当主としてその務めを果たした。40歳で弟に家督を譲ると、画業に専念。当時の画家志望者がそうしたように、狩野派の門をたたいたが、狩野派の手法を自分のものにしても、そのワクを超えられないと独学の道へ。以降、京都の寺社に伝わる中国画をひたすら模写し、さらに沈南蘋(しんなんぴん)による最新の写生画法を学ぶなどして、独自の表現を獲得していく。そうして、確かな画力を駆使した写実と、豊かな想像力で生み出した幻想を、巧みに融合させた動植物画こそが、若冲の“奇想"であり、真骨頂だ。中でも、濃密な色彩で精緻(せいち)に描かれた花鳥画は、最も得意とするもの。まだ実物を見たことのない象や虎といった動物ですら、若冲は表情豊かに、ユーモラスに、緻密に描き出す。