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一皿一皿に最高の集中力を注ぎ込んだ、10皿ほどからなるお任せコース。そもそもは、佐藤氏の師であった「ラストランス」のパスカル・バルボ氏や、その師である「アルページュ」のアラン・パサール氏が始めたスタイルだ。和食では当たり前のこのスタイルは、フランス料理では非常に珍しいものだったが、その後、パリで独立する日本人シェフはもちろん、若手フランス人シェフの多くも、食材のクオリティーと料理のパフォーマンスに高いレベルを追求するお任せコースを提案するように。しかし、そんな状況に佐藤氏は今、少し疲れを覚えたという。
「そういう店を食べ歩くうちに、一つの料理をもう少し多く食べたいと思うようになり、自分の料理もまた、一皿一皿をしっかり味わってほしくなったのです」
 この春から、コースメニューの料理とデザートを1品ずつ減らした。同時に、今までよりも一皿の量を増やし、インパクトだけが残る料理ではなく、食べたという充実感がゲストの記憶に残るようにした。そして、料理の精度をさらに極めるようになったのだ。
 「皿の中の食材の組み合わせや調理法の存在意義は、元からある。そこに、それぞれのパーツの精度が完璧に近くなるよう、意識を集中しています。料理としての在り方は申し分なくても、例えば付け合わせのイモの熱さがほんの少し足りないだけで、その料理全体の完成度が崩れてしまう。イモをバターで理想的にコンフィールして熱々のままで出す。当たり前のことかもしれませんが、実際、理想を実現できる環境はそうそうあるものではありません。うちは、17〜18名のゲストに対して料理人が7名。これだけの体制を得てコースの皿数を減らすと、今まではあらかじめある程度仕込みをしておいて、サービスが始まってから仕上げていたアスパラガスを、サービスが始まってから初めて皮をむき始めて調理する、というようなことができるのです」
店はパサージュ・デ・パノラマ内にある。パサージュとは、屋根付きアーケード街で、19世紀のパリで大流行した。今もいくつものパサージュが残り、古き良き時代のパリの風情を残し、常に散策する人々でにぎわう。
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