世界の贅沢、NILEの贅沢

It Looked Like Gold, More Modern Somehow.　122×91㎝

美術の勉強にニューヨークに来てから１年が過ぎようとしていた美奈子との出会いは若い私の目を大きく開かせてくれた。１週間のニューヨークでの休暇は美奈子と手を繋いでの画廊巡りに終始した。美術史に残る「Birthday」も、将来その横に飾られるかも知れない可能性を秘めた無名の作家の作品も、同じように目で見て心で感じることの大切さを教えて貰った。たくさんの作品を見て歩くこと。その中で自分が見て、好きといえる作品を探すこと。いつかその作品を家に飾ることを想いながら日々一生懸命生きることを。
　あれから十数年経った今、クーラーの効いた東京のマンションのリビングルームの壁には、お気に入りのトム・クリストファーのニューヨークの街が広がる。今宵もソファに深々と腰を下ろしてグラスを傾けているのはテンプルトン ライ ウイスキーをベースにした「マンハッタン」。さよならと耳元で美奈子が囁いたとき手にしていたのもこの甘くほろ苦い「マンハッタン」だったからか。