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高輪・高野山東京別院の本堂にて。堂島リバーフォーラム開館10周年特別企画として、千住博&チームラボ コラボレーション展「水」は、7月14日(土)から9月2日(日)まで開催される。“水”をテーマに千住博氏とチームラボで世界に一つだけの作品を制作する。なお今回、同展のテーマである「水」の書は高野山真言宗金剛峯寺の宗務総長、添田隆昭氏により揮毫(きごう)された。
異質のアートが起こす化学変化
Photo TONY TANIUCHI Text Junko Chiba
「水」をテーマに、日本画とデジタルアートの美が狂炎乱舞する―。千住博氏と、猪子寿之氏率いるチームラボによる奇跡のコラボレーション展「水」である。7月14日から始まるこの堂島リバーフォーラム開館10周年特別企画に向けて、目下、創作の終盤を迎えつつある千住・猪子の両雄に、それぞれの思いを語っていただいた。
「日本画とデジタルアートの二つが掛け合わさり化学変化が起きる、そこにこの展覧会の面白さがあります。互いの作品を組み合わせて設置すること自体が、クリエーティブな間。これまでにない空間が創出されることを、僕自身が楽しみにしています。見る方にも、ぶっつけ本番のライブ感を体験していただきたい」
 と千住博氏。「人生にも絵にもリハーサルはなし」という考えだ。今回のコラボでも、猪子寿之氏との打ち合わせはほんの数回だったとか。
「これまでに互いの作品はよく見ているから、事前にバーバルな言葉で話す必要はほとんどない。作品が僕たちの言語なんですよね。打ち合わせも、猪子さんが黒い波を出すと聞いて、じゃあ私はこうしよう、以上という感じ。アーティストとがっぷり四つに組んだコラボは初めてですが、猪子さんは僕にないものをすべて持っている方。そういう相手に対するリスペクトがあるから、予定調和的に綿密な計画を立てなくとも、自然と互いが100%生きる状況を創り出せると思っています」
 一方、猪子氏は「2000年代に個展をたくさん見に行った」中で、「過去が連続して未来につながっていく」ことを、時空を俯瞰(ふかん)するように表現する美術に関心を深めたそうだ。「とりわけ直島で千住さんの石橋に出合った時は感動しました。僕は若い頃、若冲(じゃくちゅう)のような絵画が『ドラゴンボール』『ワンピース』へとつながって、現代に生きていると感じていましたが、建築や美術という形でも連続しているとわかったんです。自分もそういう連続性から新しい時代を創りたいとも思いました」と振り返る。さて、今回のテーマは「水」。千住氏は数々の「滝」の作品で知られ、水を重要なモチーフとする。
「水は見えないものを見えるようにしてくれるもの。ある時は風、ある時は重力、ある時は水平とは何かを示す。人間にとっても普段は忘れている大切な何かも示してくれる。加えて水は生命の根源です。それを僕はアナログ、猪子さんはデジタルの側から攻めた。その二つが接点を持つのがこの展覧会です」と千住氏。
 猪子氏はどう捉えたのか。
「雨を線で描くようになった始まりは、江戸時代の浮世絵師、歌川広重です。それまでは多分、雨はぼやっと煙っているだけ。認識されていなかったんじゃないかな。それを広重は、カメラのレンズを少し長い時間露出させるようにして雨を見て、線にしたのではないか。そこに興味を覚えて、滝や川、海を物理シミュレーションで再現し、水の粒子の動きで線を引くことに挑戦するように」
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