タダで泊めてもらったうえに、きっと何がしかの土産も付いてきたに違いない。こんな記事を努々信用してはなるまい。企業側が魔の手を伸ばしたのか、それともブロガーがおねだりしたのか、いずれにしても、巧妙な宣伝には間違いない。このブロガーの場合、たとえ極小の字であっても、ちゃんと明記しているだけ、まだ良心的な方で、そういう事情を隠して投稿しているブロガーも大勢いると聞く。
最近は地方の観光協会などが堂々とブロガーを無料招待し、提灯記事を書かせている。そのうち、ブログは宣伝だらけになるやもしれぬ。
結局は自らの勘に頼るしかない。
地方都市で、美味しい店に出会った時の幸福感は、何ものにも代え難い。出会って、しかし気付かなければ、美味しいものには出会えない。その気付きのポイントを幾つか。
歩いて見つける。これが鉄則。散歩がてら、観光のついでに街中をぶらつくと、必ず一軒や二軒、気になる店がある。
つい最近の話。訳あって北陸の地方都市に、数日間滞在することになり、ホテルの近くでATMを探していた。ようやく見つけて、ふと通りの向かいを見ると、〈串〉の文字が目に入った。串焼き、串揚げなど、串モノ全般が大好きな僕は、すぐさま通りを渡った。
店の前に立つと、どうやら串揚げ屋のようだが、驚いたのは、店の中では、すでに仕込みが始まっていること。営業時間は午後五時半からと看板にあるのに、朝から仕込みをしているということは、余程の繁盛店か、丁寧な仕事をするのか、そのどちらか、あるいは両方に違いない。
加えて店の周りは掃除も済んでいると見えて、清潔そのもの。間違いなくいい店だろうと思って、店に入り、予約を試みたが、何と当夜は満席だと、主人らしき男性が言う。店の奥に伸びるカウンターを見ると、決して小さな店ではない。おのずと期待は膨らむ。翌晩の予約をしたのは当然の成り行き。
そして翌日食べに行って、そのレベルの高さに舌を巻いた。日本全国、数多の串揚げ屋を食べ歩いたが、その素材の良さ、創意工夫、接客、すべてにおいて、これほどの店はそうそうあるものではない。口コミサイトでも、格別高い評価を得ているわけではなく、実際に食べた感想とは、かなりの乖離がある。
開店の直前になっても、店には誰もおらず、電話もつながらない店。ゴミが散乱していたり、店の周りの掃除が行き届いていないところは、まず間違いなく駄店である。営業時間前の店を見れば、大方のことは分かるのである。
こうして見つけた店は、次につながる。次回はその話をしよう。
最近は地方の観光協会などが堂々とブロガーを無料招待し、提灯記事を書かせている。そのうち、ブログは宣伝だらけになるやもしれぬ。
結局は自らの勘に頼るしかない。
地方都市で、美味しい店に出会った時の幸福感は、何ものにも代え難い。出会って、しかし気付かなければ、美味しいものには出会えない。その気付きのポイントを幾つか。
歩いて見つける。これが鉄則。散歩がてら、観光のついでに街中をぶらつくと、必ず一軒や二軒、気になる店がある。
つい最近の話。訳あって北陸の地方都市に、数日間滞在することになり、ホテルの近くでATMを探していた。ようやく見つけて、ふと通りの向かいを見ると、〈串〉の文字が目に入った。串焼き、串揚げなど、串モノ全般が大好きな僕は、すぐさま通りを渡った。
店の前に立つと、どうやら串揚げ屋のようだが、驚いたのは、店の中では、すでに仕込みが始まっていること。営業時間は午後五時半からと看板にあるのに、朝から仕込みをしているということは、余程の繁盛店か、丁寧な仕事をするのか、そのどちらか、あるいは両方に違いない。
加えて店の周りは掃除も済んでいると見えて、清潔そのもの。間違いなくいい店だろうと思って、店に入り、予約を試みたが、何と当夜は満席だと、主人らしき男性が言う。店の奥に伸びるカウンターを見ると、決して小さな店ではない。おのずと期待は膨らむ。翌晩の予約をしたのは当然の成り行き。
そして翌日食べに行って、そのレベルの高さに舌を巻いた。日本全国、数多の串揚げ屋を食べ歩いたが、その素材の良さ、創意工夫、接客、すべてにおいて、これほどの店はそうそうあるものではない。口コミサイトでも、格別高い評価を得ているわけではなく、実際に食べた感想とは、かなりの乖離がある。
開店の直前になっても、店には誰もおらず、電話もつながらない店。ゴミが散乱していたり、店の周りの掃除が行き届いていないところは、まず間違いなく駄店である。営業時間前の店を見れば、大方のことは分かるのである。
こうして見つけた店は、次につながる。次回はその話をしよう。

かしわい・ひさし
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。