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斜面に白い壁の家がひしめき合うアルバイシン地区は、アルハンブラ宮殿が築かれる以前のグラナダ王国の中心地。イスラム時代の浴場跡などがひっそりと残されている。
アンダルシアの官能
グラナダ・マラガ
Photo&Text Chiyoshi Sugawara
Granada
愛と死のアンビバレンスは、常に官能を呼び起こしてくれる。アンダルシア出身の詩人、フェデリコ・ガルシア・ロルカが、「どこの国でも 死はひとつの終わり 死が来て幕が閉ざされるだがスペインではちがう スペインでは幕がひらかれるのだ」と語るように、アンダルシアの街々の白く明るい昼の風景は、昏い冥界と裏表なのだ。グラナダ、マラガ、セビリア、コルドバの突き抜けるような青い空の先に死に誘う官能を見ることができるだろうか。アンダルシアの大地に根ざした詩人の血は、明るい豊饒さと暗い情熱の中で、愛と死を語り、アンダルシアを語り、人々をとりこにしていく。

A las cinco de la tarde(午後の5時)
午後の5時。
きっかり午後の5時だった。
少年が白いシーツを持ってきた
午後の5時。
ひと籠の石灰、もう用意はできた
午後の5時。
あとは死、死だけだった
午後の5時。


 その名も「赤い城」を意味するアルハンブラ宮殿が夕日に赤く染まり、やがて闇の中に埋もれる頃、ダーロ川越しの丘サクロモンテの斜面に穿うがった横穴から、くぐもったような、地の底から絞り出されたような歌、カンテ・ホンドが。そしてラスゲアード、激しくかき鳴らされるギターの音がもれてくる。艶やかな衣装とは裏腹に、美しい顔は汗にぬれてゆがみ、鬼気迫る踊り子のサパティアードは激しさを増す。
 それは、まるである男の死を悼んでいるかのようである。
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