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アクティビティーから街を判断
ガラス張りの超高層ビルが、平坦(へいたん)な街に突き立っている。陽光を受けて輝くそのビルは、地元の繁栄を象徴するものだ。足元には、身なりのいい男女が整然と歩いている―近年の駅前再開発計画でよく見かける図だ。だが、この理想的な図を見て、違和感や危惧を覚える人はいないだろうか。そもそも、そんな俯瞰(ふかん)で街や建物を眺められる人間はいない。しかも、画一的で、どこの駅前なのか判断する手がかりもない。それは、本当に人にとって魅力的な街だろうか。島原氏が所長を務めるHOME’S総研が発行した『Sensuous City[官能都市] ―身体で経験する都市;センシュアス・シティ・ランキング』にはランキング・データのほか、さまざまな分野の専門家による都市に関する考察も掲載されている。以下、それらを基にまとめる。
 これまで、複数の企業が「住みたい街」や「住みよさ」で街をランキングしてきた。しかし、それらは、病床数や待機児童数などの公的なデータを主とするものや、実際にその街に住んでいる人の意見ではない、あるいは、取り入れたとしても主観的な意見だけを部分的に含めたものだった。それらは確かに、一つの基準にはなるかもしれないが、本当に人々の実体験に基づく感覚が反映されているだろうか。島原氏とHOME’S総研のプロジェクトチームが目指したのは、新しく、そしてリアルな街の指標である。
 都市の官能性は、都市の「魅力」と言い換えられるかもしれない。なんとなく居心地がいい、なんとなく楽しいといった感覚は、誰もが理解できるところだろう。だが、それを数値化し、可視化したものがこれまでになかった。これを明らかにするために、島原氏がとったのが、「動詞(=アクティビティー)で街を判断する」というアプローチだ。
 例えば、パリのセーヌ川に架かる橋では、欄干にもたれて、時折キスをしながら川を眺めるカップルがいて、それはパリの風景の一つとなっている。だが、設計者がこうしたアクティビティーを想定していたわけではないだろう。そこに至るまでの道や橋の上の風景の変化、ガス灯やサンルイ島の岸の建物と緑、対岸の街並み、適度な雑踏など、複雑に絡み合う実にさまざまな要素があって、初めてこのアクティビティーが生まれている。建築物には目的が定められているが、その範疇(はんちゅう)外のアクティビティーを生み出すのは街である。その要素を一つひとつはじき出すのは無理だが、アクティビティーから街を判断するのは可能なはずだ。
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