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(左上)パテック フィリップのクリエーティブディレクター、サンドリン・スターン氏。美術工芸への造詣が深く、スイスに息づく伝統的ハンドクラフトの継承に力を注いでいる。(上中)東南アジアを象徴する花、蘭を描いた「オーキッド」ウォッチ。細い金線で図柄を描くクロワゾネの技術と、細密描写のミニアチュールの技術を組み合わせ、奥行きを出している。(右上)マルケトリの職人によるデモンストレーション。木を薄くはいだものを重ね合わせ、ルーペで見ながら糸ノコで切り抜く作業。糸ノコは電動ではなく、驚いたことに足踏み式だ。(左下)フランス人アーティスト、マリアンヌ・ゲリー氏のペーパーアートでドラマティックにディスプレーされた会場入り口。モチーフとなったのはアジア諸国の衣装や花々、動物たちだ。(下中)ガラス瓶に入った釉薬や、その材料となるガラス片、試し焼きのパレットなどが置かれたエナメル職人の作業机。ジュネーブは、ミニアチュールエナメルが発達した歴史を持つ。(右下)東洋のタペストリーのパターンをシャンルベエナメルの技でくっきりと描いた「ゴールド バード」ポケットウォッチ。羽毛を細やかに彫金した鳥の生き生きとした表現が見事。
世界中に数多くコレクターがいるパテック フィリップのエナメル。
グラン・フーと呼ばれる高温焼成のエナメルのみを使用し、低温焼成のコールドエナメルは使わないという。会場にはミニアチュール(細密七宝)、クロワゾネ(有線七宝)、シャンルベ(象嵌七宝)、グリザイユ(単彩七宝)などの技を駆使したスペシャルモデルが展示されていたが、その美しさ、繊細さは圧巻としか言いようがない。マルケトリ(木象嵌)、エングレービング(彫金)の職人たちによるデモンストレーションも行われ、それぞれの工芸がどれほど緻密(ちみつ)なものなのかを、来場者は目の当たりにすることになった。
「美の本質とは、クオリティーなのです。色彩や造形など、美の要素はさまざまにありますが、どれもクオリティーが低ければ人を感動させることはできません。クオリティーを極めることが、すなわち美を極めることなのです」と語るのは、メゾンのクリエーティブディレクターを務めるサンドリン・スターン氏。パテック フィリップの時計が持つ揺るぎない美しさは、このように透徹した哲学に支えられているのだ。
 展示はさらに「ウォッチメーカー」ルーム、「グランド・コンプリケーション」ルーム、「ムーブメント」ルーム、「インタラクティブ」ルームと続き、一日中いても飽きさせない。世界各国からかけつけた高級時計愛好家たちにとっては、まさに至福、眼福の展覧会なのであった。
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