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(右)T30 2013年発表。1982年に完成させた初のトゥールビヨン懐中時計以来、時計師としてのキャリア30周年を記念し、オリジナルの懐中時計をベースに腕時計化。99本限定で製作。
(左)T10 2013年発表。ファーストブティックであるF.P.ジュルヌ 東京ブティック開店10周年を記念し、10本限定で製作。
『T30』と同様の設計のムーブメントを、プラチナケースに搭載。
天才の軌跡-2
問題児がトゥールビヨンを完成させるまで 

 鼻っ柱の強そうな、長髪の少年の写真が、F.P.ジュルヌのヒストリー・ブックの最初のほうに載っている。若き日のジュルヌ氏である。
1957年、マルセイユに生まれた彼は、幼少期から時計師としての才能を発揮していたわけではない。それどころか、地元の時計学校を退学処分となり、その後、パリで時計修復工房を営む叔父のもとへ送り込まれ、夜間はその手伝いをしながら、パリで改めて入学した時計学校を何とか卒業する。彼曰いわく「一般教養の授業には興味が持てず、全く授業を聞いていなかった」そうだが、ウォッチメイキングに対してだけは不思議と真剣に取り組むことができた。
 叔父の顧客が集まるサロンで目にする17~ 19世紀の時計も彼の心を捉え、自分で一から時計を作りたいという衝動を抑え切れなくなってしまう。ついには、当時技術の継承が途絶えていたトゥールビヨンを自分の手で蘇よみがえらせようという無謀な挑戦に乗り出す。弱冠20歳の時だ。
 トゥールビヨンとは、史上最も偉大とされる時計師、アブラアン︲ルイ・ブレゲが開発し、1801年に特許を取得した機構である。腕時計や懐中時計において精度を司つかさどるのが、ヒゲゼンマイやアンクル、ガンギ車などから成る調速脱進機構だが、これは、通常一定の位置に固定されている。これを機構ごと1分間で1回転させ、重力の影響を平均化し、精度を高めるメカニズムである。設計から組み立てに至るまで、極めて難度が高いことが知られている。
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