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1.「西陣の織物とか清水焼とか、京都には産業ごとに、ごひいきにしてはるおいしい店があるんです」と山下副知事。
2.「京野菜は東京で買ったら高くて……。壬生菜はそもそもいいのが少ないですからね、東京では」と神田氏。
3.「京野菜は多くが外来種をアレンジした“京都人の工夫”のたまもの。肥沃な土ゆえに丸く、大きく育つ」と徳岡氏
京都は傾斜地。北の方が水はいい

【山下】 平城京のあった奈良の中心部は、今は公園で鹿さんがいるだけですね。でも、平安京の京都は千年以上続いて、いまだに産業と生活の中心地として機能しています。それはなぜか。水なんです。1人当たり使える水の量が、平城京の5倍だとか。

【神田】質ではなく量ですか?

【山下】第一に量ですね。京都は三方が山に囲まれていて、地下に琵琶湖に匹敵するくらいの水があると言われています。北大路から南へ、緩やかに傾斜してます。

【徳岡】北の方がちょっと高いですね。

【山下】そう、京都タワーと同じくらい、100mちょっと違うんですよ。それで一番北に茶道のお家元があって、少し下がって豆腐とかの食品を作ってはる人がいて、さらに南が染め物のお家なんです。

【神田】北が一番いいお水なんですね。水は高きから低きへ流れ……

【山下】万物を養う自然の摂理です。

【神田】京都の料理屋でお出汁がおいしいのは、やっぱり京都の水がおいしいからですか?

【徳岡】うん、水ですね。

【神田】今でも水道水が使えますか?

【徳岡】ええ、うちも出汁は水道水です。もちろん、そのまま使うのではなく、浄水・アルカリイオン化して使ってます。ほかに京都は名水を含めて水脈がいろいろあって、全部違います。今、「神聖」の山本源兵衛さんなどの、蔵元から仕込み水をもらって、出汁ひいてみて、どう違うかを比べてます。季節によっても水質が変わるので、常に見ていないと。比較的安定しているのが水道水なので、ベースにしているという感じです。

【神田】東京だと、水道水はムリ。うちは今、お出汁は伊豆の観音温泉水です。アルカリ繽翌ェ9・5なのに超軟水っていう、なかなか面白いバランスのお水です。昆布で一番出汁をとっても、全く濁らない。

【徳岡】へぇ。昆布や鰹と水の相性もあるんでしょうね。


“暴れ川"が肥沃な土を作る

【山下】京都は土もいい。同じ年代の古墳を掘る時、京都は奈良よりも深く掘らなくてはいけないそうです。何でかと言うと、何回も洪水が起こってるからです。賀茂川も“暴れ川"だし、洪水のたびに上流から肥沃な土砂が流れてきて、京都を埋める。

【徳岡】僕が子供の頃から桂川も、よく氾濫しました。今年のはかなりひどかったけど。

【神田】だから、比較的最近の柔らかい土の重なりになってるんですね。

【山下】これ、京都の「祝」という酒米で造ったお酒、どうぞ。昭和40年代から栽培が途絶えてましたが、20年ほど前に復活しました。この酒も京野菜も宇治茶も京都でおいしいのができるのは……

【徳岡】水と土壌ですね。

【神田】京野菜に共通する柔らかさとみずみずしさは、土だと思いました。
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