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甲革にフランス・アノネイ社のベガノカーフを使用した40周年記念モデル。同じ革を使ったベルトと木製シューキーパーがセットになって54,000円(キングサイズ59,400円)だ。メンテナンスにはぜひ「モルトドレッシング」をお試しあれ。夜の静かなひととき、例えばダルモアのようなシングルモルトスコッチウイスキーのスモーキーな味わいを楽しみながら、靴クリームに混ぜてみてはいかがだろう。大人の男の極上の時間が得られるに違いない。お手入れ方法についてはウェブサイトを参照されたし。
「墨田区ブランド」の矜持 ヒロカワ製靴
Photo Takehiro Hiramatsu(digni)
Text Junko Chiba
Made in Sumida-ku, Tokyo―。
ヒロカワ製靴の手による最高級のシューズブランド、スコッチグレインから、この夏、誕生40周年記念モデルが登場する。職人が手で磨いて仕上げた輝きと、重厚感漂うその姿に、息をのむ思いだ。この一足には確かに、「職人の誇り」がみなぎっている。
ヒロカワ製靴は東京・墨田区にある本社工場を拠点に、特異なシューズメーカーとして異彩を放ち続けている。その光源こそが、今年誕生40周年を迎える唯一無二のブランド「スコッチグレイン」だ。
「創業者であり現会長の父には、自分たちのつくりたい靴をつくりたいという強い思いがあったのでしょう。当時はまだ、メーカーがブランドを持つことはほとんどない時代でしたからね」と廣川雅一社長は振り返る。そのスコッチグレインが最高級と認知されるに至った裏には三つのこだわりがある。
 一つは「グッドイヤーウェルト製法」なるもの。別名「複式縫い」。すくい縫いとだし縫いの二つの工程から成る。機械が大がかりなうえ、職人の経験と技能を要するため、メーカーの多くは「いいと分かっていても導入が難しい」のが現状。メーカーとしてヒロカワ製靴のように製品の全てにこの製法を採用しているところは希少だという。履きなじみといい、疲れにくさといい、3層構造の靴底は、グッドイヤーだからこそ可能な品質。こだわりのたまものである。
 二つ目は、素材への飽くなき追求だ。“墨田区産"の靴だが、素材は国境を越える。世界に点在する“タンナー(皮革製造業者)"を実際に訪ね歩き、厳選した革素材のみを使うという。アッパーは水性染料で仕上げたカーフを日本、フランス、ドイツから、ライニングは染色していないヌメ革をバングラデシュから、中底・本底はタンニンなめしと耐久性に定評のあるイタリアから輸入。しかもアッパーに使用する革は、一枚一枚微妙に違う個性を自らの目で検品し、グレード分けをする。例えば張りのあるきれいな尻の部分は靴の爪先、シワや血管の痕のある部分は適所に使うなど、職人が革の肌目や繊維の向き、取り都合を考えながら裁断するそうだ。
 そして三つ目のこだわりは、創業以来使用している「木型」である。特徴的なのは、快適に歩けるよう、接地面に独特なひねりが施されていること。「スコッチグレインには、創業者から引き継いだ木型へのこだわりが脈々と生きています。長く愛用していただけるよう、流行よりも、いつの時代も変わらない極上の履き心地にこだわっています」と廣川雅一社長。それこそが「ブランドアイデンティティー」なのだ。
 さて、40周年記念モデルは、写真が物語るように、「ふだんは使わない明るい色調のブラウン」をベースに茶の濃淡が上品なハーモニーを奏でる、ため息が出るくらい美しいシューズである。とくに磨き込まれた爪先のツヤ感、ブローグラインの繊細さをインクで強調、靴底に貼られた琥珀(こはく)色のフィルムが醸すほどよいムラ感など、眺めているだけで幸福感に満たされるほどだ。
「今後もこれまでの伝統を守りながら、いたずらに会社の規模を求めず、東京・墨田区に根をおろして心を込めた靴づくりをしたい」―ヒロカワ製靴には早、“百年・千年企業"の風格が漂っている。

●スコッチグレイン 銀座本店 TEL03-3534-4192
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