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チョコレートへの挑戦
ESqUISSE
Photo Masahiro Goda Text Rie Nakajima

“甘さ"ではない、チョコレート本来の味を伝えたい―。ジョエル・ロブションの下でもシェフパティシエを務めたレストランESqUISSE(エスキス)の成田一世氏は言う。その真意を、成田氏の“チョコレート学"とともに聞いた。
「日本人には、市販のチョコレートは甘すぎると思っています」。エスキスのシェフパティシエの成田一世氏は、こう話し始めた。
「ほとんどの日本人には、完熟したフレッシュフルーツと同じ、糖度17縲~18度が限界です。それ以上になると、糖度に負けて素材本来の味を探しづらくなってしまう。日本でも数多くのチョコレートが出ていますが、甘さが突出しているがゆえ、チョコレート本来の味を楽しめないのは残念です」
 ライフスタイルや食生活の変化で、今、世界的に甘さに対する許容範囲は狭くなっている。「だから、世界で和食が好まれるのです。でも、チョコレートだけは、日本でも甘いままです」と、成田氏は続ける。「嗜 好品には、人々に受け入れられるまでに経緯があります。でも、日本人は外から入ってくるものに対して許容範囲が広いので、チョコレートについてもヨーロッパの嗜好のまま入ってしまった。その結果、違いは味ではなく、甘さが基準となったのです。チョコレートは化学的にとても安定した食材で、柔らかくしたり、つやを出したりといった特定の質感を出すための方法論は、一つか二つしかありません。皆が同じメーカーの製品を買い、同じ製法で作るのですから、味に差が出にくい。だから、パティシエにとって、チョコレートは難しい食材です」
成田一世(なりた・かずとし)
フランス料理店「ESqUISSE」シェフパティシエ
パリやイタリアのレストランで研鑽を積み、恵比寿の「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」のシェフパティシエ、台湾の「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」でエグゼクティブシェフパティシエを務めた経歴を持つ。
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