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(左)特別賞 渡邊佳織 「プライベート・ヒロイン」 2016年 絹本 墨、岩絵具、水干絵具、金箔、雲母、膠 (上)堂島リバーフォーラム賞 大森隆史 「道」 2016年 雲肌麻紙 岩絵具、銀箔、アクリル絵具
山下氏が推した特別賞と堂島リバーフォーラム賞
山下――あっ、その作品を描いた渡邊佳織さん(写真左)いらっしゃいますか。いらっしゃらない。これは僕が推しました。
 千住――僕もこれは評価に値すると思いました。やっぱり面白いのは、椅子があって木を描きますという時に、こうやってぶち抜いて描くっていう人はまずいない。また人物を絡める時に、椅子の上にスケール感の違う人物をそのまま直立させるという考え方はあんまりしない。映像とかパソコンの中で、画面をいじるという感覚がすごく生きてるんだと思う。そういう意味で新しいし、やっぱり古典的なものでもある。その両方が混在しています。
 山下――僕はね、さっき線が引けなきゃダメだって言ったけど、この顔とか手足とかの描線って相当一生懸命やっていて、しかもこれ絹本(けんぽん)なんですね。絹。絹に描いている。これからの可能性をすごく感じました。ただね、この顔の描写を見てると、現代の中国の作家の硬筆画といわれるものがあるのだけど、そういうものを見ている記憶があるのかなって気がします。でも衣装は東南アジアっぽかったりとかですね、でも木の描き方は、ちょっと琳派みたいだったりとか、不思議な無国籍な感じが僕はとてもいいと思いました。まあ、大賞受賞作以外では、一番推した作品でした。でも今、絹で描く人少ないじゃないですか。千住さんは絹で描くの?
 千住――いやあ、大学の時に課題では描いたけど、結局いろんな制約があって、絹は物理的に手に入れにくいよね。今の時代。絹の宿命だけど、年月が経つと真っ茶色になっちゃうじゃない。そういうことを考えた時に、何も絹じゃなくていいなって。あと、高いんだよ。
 山下――いいじゃん、もう千住さんお金持ちなんだから。絹に描きましょうよ! 絹じゃなきゃ描けない絵っていうのがあるんですよ、伊藤若冲の「動植綵絵」なんて、絹でなくてはあんな発色なんて絶対に出ない。絹に裏彩色(うらざいしき)しないとね。でもこの人裏彩色がどのくらいわかっているかというと、それはあまりわかってない気はするけども……。この人、日本画の人なのかなあ? じゃないかもしれないね。略歴は……。
 千住――日本画じゃないかもしれないね。日本画だと裏彩色をたぶん学ぶんだけど、そんな感じはないですね。
 山下――現代美術を扱うイムラアートギャラリーで発表してるからコンサバではないですね。

 山下――次は堂島リバーフォーラム賞。主催者が選んだ賞ですね。これ描かれた方いらっしゃいますか? いらっしゃる。この人は千住さんの作品もよく見ていらっしゃるんじゃないかと、想像するけれども、どうですか、千住さんから見て。
 千住――僕ね、この人の作品よく見てるんですよ。いろんな所で。僕が審査員をしていた「上野の森美術館大賞展」や「枕崎国際芸術賞」に出していました。とてもコツコツとされていて、いろんなアドバイスを僕もしました。毎回それをきちんと噛み砕いて、自分のものにしている。だから大器晩成といえるような、長いんでね、ずっとしっかりやっていってほしい人ですね。もっとよくなっていく絵だと思います。
 山下――僕も改良の余地があると思いますね。絵の下のほう、水面に映っている月が半分切れているというのも、すごく面白いです。
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