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特別賞 フクシマサトミ 「ここがどこなのか、どうでもいいこと2」 2016年 雲肌麻紙 墨、染料、水干絵具
山口晃氏が選出した特別賞作品
山下――次は、フクシマサトミさんの作品。作家の方いらっしゃいますか。いらっしゃる。これは確か山口晃君が推してたね。どうですか千住さん。
 千住――日本画を今までずっと見ていて思うんだけど、日本画自体の本当のところに食いついて描いている作品というのは少なくって、ただ絵具をのっけて線を引いているという感じで、それが水性であること、紙であること、顔彩を使うこととか、本当の日本画の素材としての基本を、あまり考えずに描いている人が多いんですね。しかし、この作品には滲みとか、紙が持っている長所を引き出そうとするところがあります。もう一つは、この絵具というか塗料の発色を生かそうとして使っている。他の日本画の展覧会、まあ今回もそうだけれども、概して日本画といわれる人は、それを道具として使って、描写してみたり、なんてことない風景を描いてみたりする。この人の場合は、絵具自体を何とかしようとしている点に魅力を感じました。
 山下――京都造形出身なんですね。
 千住――そうなんです。彼女は学生時代から知っています。
 山下――これを山口君が推したっていうのは、面白いなと思いますね。
 千住――彼は筆の使える、絵の描ける男だから、これが日本画といった時に、紙の可能性としてね、こういうのがあったというのは山口にとっても、新鮮に映ったんだと思います。発色を画面の全面に押し出そうとしている。絵具の滲みみたいなものをうまく使っていることが山口にとっても新鮮だったんでしょう。
 山下――で、女性像の作品(写真下)を僕は強く推したんだけれども、山口君はあまり推さなかったね。でもひょっとしたら、渡邊さんは山口君の作品が大好きな人なんじゃないかと思うんです。ある意味で似た傾向もある。このことを山口君に言ったら、「いやあ、出る杭は打つということですよ」って。だから彼は、自分とは全然違うタイプの作品を推したのかもしれません。
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