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ルカス・クラーナハ(父) ≪ホロフェルネスの首を持つユディト≫ 1530年ごろ ウィーン美術史美術館 ⒸKHM-Museumsverband.
「クラーナハも初期には版画作品を手がけていますが、早くに油絵に転向しています。そして、自身の工房を持ち、油絵の量産に成功しました。工房では自ら手本となる作品を描き、息子や弟子が少しバージョンを変えた作品を作っていたようです。そのため、最近では大工房を経営して財をなし、新しい絵画主題を次々に生み出した経営者としての手腕が評価されています」
 薄塗りである点を批判する向きもあるが、現在はプラスに評価されている。というのも、“薄塗り"によって生産性を上げただけでなく、独自の美を築いたからだ。宮廷画家として高い社会的地位も誇ったクラーナハは、優れた芸術家であると同時に、優れた実業家だった。そして、進歩的な思想活動家でもある。その一端が、ルターの盟友であり、専属画家であったという事実に表れている。
 「ルターの肖像画は、クラーナハだけが描くことを許されていました。ルターの考える絵画の役割を体現していたのはもちろんですが、宗教画の世界に新機軸を生み出したのは、まさしくクラーナハの功績です」
 《ホロフェルネスの首を持つユデュト》は、メッセージ性の強いクラーナハならではの作品だ。
 「首がスパッと切られて、切断面がこちらに向けられています。美女と残虐性というモチーフを、着衣の高貴な女性人物像で表現した、非常に完成度の高い一枚。ユディトはイスラエルの国を守り、当時はマリアのシンボルともされた人物です。一部の解釈によると、これが描かれたのは、プロテスタント諸侯が皇帝とカトリックに対抗するために結束した記念すべき年。そうしたプロテスタント側の心意気を、彼女に反映させているという見方もあります」
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