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中国美術学院博物館
杭州郊外の美しい自然の中に小さな茶畑の山と建築とを一体化させた、新しいタイプの博物館。山の斜面を極力削らず、斜面によりそうように建築しようという試み。材料は地元の古い民家に使われていた瓦や石材を採集して用いた。
建築とIT、自然が融合
ダイワユビキタス学術研究館
小さい建築だけでなく、隈氏は“見えない"建築も手掛けてきた。自然との一体化をうたい、ランドスケープをメーンに、空間を重視した建築などである。
 愛知万博に提案した「森の中の自然博物館」のサイバー建築が話題を集めた。現在は、ハワイで庭園墓地の中に個人の墓を造っている。墓地のスペースに遺族が集まれるウッドテラスを作り、その中に小さな墓石を置く。また、中国美術学院博物館は地下に築かれ、建物が周囲の自然となじむ、建築となっている。
 このように新しい建築と新しい空間を築く先駆者といえる隈氏だが、この5月に、今度は建築とITが融合した建物を造った。
 大和ハウス工業が社会貢献事業として、隈氏の母校東京大学に寄贈した「東京大学大学院 情報学環 ダイワユビキタス学術研究館」だ。これは、東大大学院情報学環の研究棟で、ユビキタスが意味するように全ての空間にITが遍在している。それが館内の実空間の全てのモノ、人、情報などの状況を自動認識し、クラウドサーバーと連動、環境の最適化を図る。実物大のバーチャル展示も可能な空間アーカイブが設置されている。
 「ITと建築、そして、自然素材の融合をテーマにしたもの。建築学科にとっても意義のある研究棟になるはずです。近年の大学などの校舎は安普請のつまらない建物が多い。その中で、研究意欲が高まるようなクリエーティブな空間と、自然を感じさせるファサードを提案しました」
 ランダムにウロコのように張られた小さな杉板のファサードが、細かい粒子が重なり合うように建物を柔らかく包む。総計8000枚近い不燃処理をした杉板の自然な、かつ微妙に計算されたそのランダムネスもまた、コンピューターソフトのなせる業だ。この杉板は、大気中のCO2に働きかけ、地球温暖化を抑制する機能も備える。
 建物の裏は、かつて前田家の上屋敷があった場所で、現在は懐徳館の本格的な日本庭園「懐徳園」となっている。そのため、庭園に面したファサードは左官職人の挾土秀平氏が、網状の壁に土を吹き付けた「透明な土壁」とし、庭園とも融合した建物なのである。
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