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(左)すっぽんの玉子豆腐椀
煮上げたスッポンの身をあられに切り出し、スープを玉子で割って、ともに型に流し、玉子豆腐とする。
スープの味付けは塩だけが好ましい。

 ジビエとは、「野生動物」の意。鴨や鳩、うずらはもちろん、熊や猪など全ての野生の食肉のことを指す。肥育された牛や豚とは違い、味わいは濃いが、調理にも技術と経験を要する。
 すっぽんは、日本の“ジビエ"だと考えている。臭みが気になるという人も多く、万人受けする食材ではないが、すべからくジビエのにおいは“くせ"になるか、“くさい"と思うかだろう。どっちに感じるかは、下処理の丁寧さによるところが大きい。
 すっぽんならまずは、さばいた身の血をきれいにさらし、汚れを丁寧にぬぐって、きめ細かくあくをすくう。うまみを逃さず、しかし雑味を極限までぬぐう手間と知識こそが必要なのだ。
 人間がおいしく食べるために改良された肉と違い、自然界に生きる動物は、おいしく食べられることを前提としていない。
 肉だけでなく、日本では野菜や果実も食べやすいように、万人に愛されるように改良してきたが、今はまた食物本来の姿を取り戻そうとする動きも出てきた。
 自然のものを変えるのではなく、おのずから英知をもって近づいていき、より美味に変換させていく。これもやはり“料理"に課せられた使命だと感じる。
 現に私も、時流に乗ってか、今ではより濃い味の鴨を求めるようになっている。

元麻布「かんだ」
東京都港区元麻布3-6-34 カーム元麻布1F TEL03-5786-0150
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