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(左)ふぐ白子焼きのすり流し椀
ふぐの白子のすり流しは、まるで搾りたてのミルクのように優しい白さをたたえている。

1.生きのいい伊勢海老は頭を外して、身を取り出す。
2.下ろした海老の身を葛をまぶして、さっと湯がく。
3.小さめに切った餅は、表面に焦げ目が付く程度に焼く。
4.大根、人参、柚子、キクラゲ、セリを千六本に刻む。
5.ふぐの白子は表面をこんがりと、中はふんわりと焼く。
6.出汁で炊いた白子を、そのままミキサーに入れて“ポタージュ”に。
 ふぐ白子のすり流し。蒸して裏ごした白子を濃いめの吸い地出汁で伸ばし、酒を加えて静かに煮立てる。「かんだ」では基本お野菜のすり流しは店では供さない。優しくふくよかなすり流しが嫌いなわけではないが、やはり“雅味"に欠けると思うからだ。しかも、どんなに細かくこしても、舌の上にザラリと残る後味に夢が覚める思いがするのだ。白子のすり流しも決して強く煮立ててはいけないと戒めるのもそのせいで、ここも火加減で滑らかなのどごしを表したい。
 白子のすり流しには焼き餅と焼き白子を盛り込み、その上から出汁で煮た五色の野菜をあしらう。大根、京人参、セリ、キクラゲ、それに柚子である。五つにしたのはやはり“和"の縁起担ぎで奇数を好むからだが、食感も香りも異なる、色とりどりの野菜が美味な日本の風土は、本当に素晴らしいと思う。
 日本料理は、日本の風土に生かされている。春夏秋冬の自然に育まれたこの国の豊かな食物のおかげで、2013年も「おいしい」と言ってもらえる料理を作りたい。
 「椀味不只淡」=「わんみただたんにあらず」とは私流の造語であり、目標であり、戒めだ。椀の中に技術と哲学と思いと経験の全てを駆使し、「淡」を目指そう。
 道はまだまだ遠い。

元麻布「かんだ」
東京都港区元麻布3-6-34 カーム元麻布1F TEL03-5786-0150
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