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過去の連続が今となる
現在進行形のマドリッド
 英国人は“Eat to live"生きるために食べ、スペイン人は“Live to eat"食べるために生きる人種だとしばしば揶揄される。スペインの食文化を語ることは、スペインそのものを知ることと等しい。スペインは日本と同様、地理的に変化に富んだ国土ゆえに、それぞれの郷土料理においては生産現場からの影響がより強いのが特徴だが、首都マドリッドに限ってはそれら素材と地方色を最大限に活かした、独自の文化としての完全な咀嚼、いわばスパニッシュ・ガストロノミーの臨界点の様相を見せる。
 一般に、欧州の食文化の指標はオート・キュイジーヌ―宮廷料理にルーツを求める例が多い。一方、近世にいたるまで、教会勢力が国政を左右したマドリッドの場合は、庶民階級の需要と消費が食文化に大きな影響を与えてきた。その典型例にして最も伝統的なものがバカラオ(干しダラ)料理だ。「沿岸地域以上に魚介類の種類が豊富」といわれるマドリッドの海産物志向が緒に就いたのも、ここからである。
 バカラオは、1492年のスペイン統一以前からスペインでも宮廷を中心に食されていたといわれるが、レコンキスタ完成によるイスラム色一掃および急激なカトリック啓蒙を転機に、またたく間に庶民階層に広まった。直接的な影響力となったのが、今日まで残る四旬節という肉断ちのカトリック教義だ。こうして始まった動物性蛋白の補給源を鶏卵や乳製品、魚介類に求める習慣は、食文化にも大きな影響を与えてきた。くわえて見逃せないのが、こうした風習の確立以前からの食文化自体がすでに、他の欧州地域に例を見ないほどの異文化消化笊ア昇華であったという点だ。
(左)スペインの食の歴史を語る上で欠かせないバカラオ=干しダラ。
(右)スペイン一新鮮な魚介類が揃うといわれるマドリッドの市場。
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