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歌川国芳 弘化元(1844)年頃 大判錦絵三枚続 36.2╳74.1㎝ William Sturgis Bigelow Collection 11.30468-70 Photograph ⓒ 2015 Museum of Fine Arts, Boston
「相馬の古内裏に将門の姫君滝夜叉妖術を以て味方を集むる大宅太郎光国妖怪を試さんと爰に来り竟に是を亡ぼす」〈歌川国芳〉
(「そうまのふるだいりにまさかどのひめぎみたきやしゃようじゅつをもってみかたをあつむるおおやのたろうみつくにようかいをためさんとここにきたりついにこれをほろぼす」)
 江戸時代の読み物で、平将門没後の後日譚『善知鳥安方忠義伝(うとうやすかたちゅうぎでん)』(山東京伝著)の一場面をダイナミックに描いたもの。平安時代の武将、源頼信の家臣大宅太郎光国(画面中央)が、将門の姫君で妖術を操る滝夜叉姫と下総相馬(現福島県)に、かつて将門が築き、打ち果てた古内裏で対決する緊迫の場面である。御簾を打ち破って、光国に襲いかかる大きな骸骨の迫力に満ちた動きに目をみはる。原作ではたくさんの等身大の骸骨が現れるのだが、国芳は巨大なバケモノに変更することで、見るものの度肝を抜いた。
 骸骨を詳しく描き込む国芳は、西洋から伝わった解剖書の図を参考にしたと考えられているが、元になった具体的な書物はわかっていない。鎖骨がないなど骨格の構造に不正確な描写もみられる。背景を漆黒に塗り潰し骨の白の印象を強めつつ、三枚続のうち、右二枚分の半分をカーブした御簾の線で区切って大骸骨の動きも生み出す国芳の画面構成のセンスに並び立つものはいない。
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